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fld_nor.gif ルールの違いによるセキの数え方
投稿日 : 2021/07/03(Sat) 00:19
投稿者 hope366
参照先
先日行われた本因坊戦第六局で、右下にセキの形ができました。
これについて終局後六浦七段がツイッターで、
「これはaiが中国ルールで計算してるため発生した事件ですね。右下のセキですが、日本ルールだと黒地2目ですが、中国ルールだと4〜5目となります。この差だけaiは黒に有利な評価値を出していましたが、実際は正しく打てばわずかに白勝ちと思われます。」
と発言されています。
https://twitter.com/mutsuura0501

事件というのは、朝日新聞囲碁取材班がツイッターで発表した以下の発言です。
「感想戦で驚くべき事実が判明しました。なんとAIの評価値と真逆に、終局直前まで芝野さんが優勢でした。終局5手前が敗着。直後の井山さんの手段を芝野さんが見損じて、逆転したそうです。AIの計算ミスは極めて珍しいですが、芝野さんにとっても痛恨の大見損じでした。」
https://twitter.com/asahi_igo/status/1410196359919984646

つまり六浦七段は、これはAIのミスではなく中国ルールで計算されたために黒に2~3目有利な表示になった、と言っているわけです。

これについて少し調べてみました。
本対局は中押しで終わりましたが、そのままだと計算できないので私が適当に石を追加して打つべきところがもう無いという形を作りました。
添付図はlizzieのKataGoで分析した結果で、左の図が日本ルールコミ6.5目、真ん中の図が中国ルールコミ7.5目です。
日本ルールでは黒2.7目リード、中国ルールでは黒2.5目リード、ほぼ同じような数値を示しました。六浦七段は日本ルールと中国ルールで2~3目違うと言っていますがおかしいですね?

念のために自分でも数えてみました。

まずは日本ルールから。
黒地84目 アゲハマ9個 合計93目
白地81目 アゲハマ3個 コミ6.5目 合計90.5目
結果、黒2.5目勝ち lizzieの表示とほぼ同じです。

次に中国ルール。
黒石101個 黒の空点84 セキの共通ダメの折半分0.5 合計 185.5子 
白石98個  白の空点77 セキの共通ダメの折半分0.5 合計 175.5子
中央値180.5子との差は5子、つまり盤面で黒が5子リード、コミが3と3/4子なので差し引き黒が1と1/4子勝ち、1子は2目相当なので倍にして黒2.5目勝ちです。

lizzieの表示とほぼ同じになりました。
セキが発生した場合は日本ルールと中国ルールで結果が異なる場合があるらしいですが、本対局のセキの場合はどちらのルールでも同じ結果だと思います。
セキの部分だけを見ると黒の石数が多いので5目差なのですが、白の石数が少ない分白は他に打っているはずなので結果は変わらないのだと思います。

ではどのような場合に日本ルールと中国ルールで結果が異なるのかというと、右の図のような場合です。
この形は白からはどこにも打てませんが、黒からはあと2手打つことができます。
つまり、最後の最後もう打つところがお互いに無いという状態になった時に、黒は白にパスを強いて黒だけが2回連続して打つことができるのです。
この分だけ中国ルールでは黒が有利になりますので差が生じます。

なので、本対局のようなセキの場合はどちらのルールでも目差は変わらないと思います。
これが私なりの結論なのですが、実は本対局の最終局面を分析してみると日本ルールと中国ルールで1.5目ほど黒に有利な数値が出ました。
これはセキの数え方ではなく、何か他の理由によるものだと思うのですが不明です。後でKataGoのIssuesに投稿してみようと思います。

ちなみに、youtubeの棋院のAIの表示(最終局面図)は、私の手元のlizzieで中国ルールに設定した場合の数値に近いものでした。

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件名 Re: ルールの違いによるセキの数え方
投稿日 : 2021/07/03(Sat) 13:15
投稿者 Eba
参照先
hope366さんの疑問についてはlightvectorさんにお任せするとして、私はセキの部分に疑問があります。
日本ルールではセキの中に目があっても数えない。アゲハマを取れる場合は取れる。ということなので、本因坊戦第6局の右下は黒白双方とも地は0、黒にアゲハマ1個のはずです。六浦雄太七段が「日本ルールだと黒地2目」と書いている理由が分かりません。(LizGobanも黒+2と表示してますが、この理由は別でしょう)
https://twitter.com/mutsuura0501/status/1410210834505093123

参考記事を示します。
日本棋院のセキに関するルール
https://www.nihonkiin.or.jp/match/kiyaku/kiyaku08.html
日本と中国ルールでのセキの数え方
http://rule.igotube.net/seki.html
中国ルールについては以下が詳しいです。
http://sowhat.ifdef.jp/igo/chinese/

1625285742-s-1.jpg

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件名 Re: ルールの違いによるセキの数え方
投稿日 : 2021/07/03(Sat) 18:46
投稿者 hope366
参照先
黒は、14-17の地点の白石1個と、盤面には見えていませんが、かなり早い段階で白が17-19にホウリコミを打っていて黒がこれを取っていますので、この分を足してトータルでアゲハマ2個となります。

KataGoが今回のセキの形を加味したトータルの推定目差をどのように計算しているのかについては、lightvectorさんから詳細な説明があり自分なりにかみ砕いて理解しているところですが、自分なりの見解を述べてみます。

今回のセキの形は白からはこれ以上手出しができませんが、黒からはあと2回打つことが可能です。つまり最後の最後で白に2回パスを強制して黒が石を2個置くことができます。
次に最後のダメ埋めにかんしてですが、最後に白がダメを埋めた場合はお互いに同じ数の石数を使ったことになりますが、最後に黒がダメを埋めた場合は、黒が白よりも1個だけ余計に石を使ったことになり、この1個分が黒に有利になります。最後にどちらがダメを埋めることになるかの期待値が50%だとすると、推定目差として黒に0.5ポイント加算されます。

最後の黒だけが石を2個置ける有利分と、最後のダメを埋める期待値を足して2.5ポイント、これが今回のセキの形での黒の有利分になりますが、中国ルールはコミが7.5目で日本ルールより黒が1.0ポイント黒に不利なので2.5から1.0を引いて最終的なルールの違いによる黒の有利分は1.5ポイントとなります。

実際に本対局の最終局面図をlizzieで分析してみると、双方のルールによる目差の違いはほぼ1.5目となり、lightvectorさんもKataGoの計算が正確であると言っています。
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件名 Re: ルールの違いによるセキの数え方
投稿日 : 2021/07/03(Sat) 19:43
投稿者 Eba
参照先
なるほど、途中のホウリコミは見逃してました。
KataGoの計算についても了解しました。ありがとうございます。
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件名 Re: ルールの違いによるセキの数え方
投稿日 : 2021/07/04(Sun) 11:07
投稿者 Ted
参照先
hope366さんおっしゃる、
>>ちなみに、youtubeの棋院のAIの表示(最終局面図)は、
私の手元のlizzieで中国ルールに設定した場合の数値に近いものでした。
の(最終局面図)とは添付スクショですね。
(芝野さんが投了した場面です。各数字はその後若干変わって行きます。)

目差が12程度あり、観戦者には分かりにくいですね。
また、AIも今やたくさんあるのでどのAIか表示して欲しいですね。
個人的には、KataGoの日本式を使用していただきたいです。
NHKトーナメントでもAI表示をやっていますがこれも何のAIか表示して
欲しいのですがさすがNHKは無理でしょうね。(笑)

1625364467-s-1.png

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件名 Re: ルールの違いによるセキの数え方
投稿日 : 2021/07/04(Sun) 13:00
投稿者 hope366
参照先
youtubeの日本棋院のAIの表示はlizzieだと思いますが、目差が表示されているのでKataGoなのでしょう。
芝野さんが投了した最終局面図を、日本ルールコミ6.5目、中国ルールコミ7.5目でそれぞれ分析してみました。
日本ルールでは黒が10.3目リード、中国ルールでは黒が11.8目リードとなりました。日本棋院のAIの表示は黒が12.2目リードとなっていますので、中国ルールの可能性が高いと思います。

私の手元のKataGoでは、日本ルールより中国ルールのほうが黒が1.5目余計にリードという表示です。
単純な解釈としては、右下のセキに関して日本ルールはお互いに0目ですが、中国ルールだと黒が3.5目、白が1.5目で2目だけ黒が有利、しかしコミが1.0目分日本ルールより黒が不利なので1目黒が有利、さらに最後のダメをどちらが埋めるかによる期待値が黒に0.5目分あるので、最終的に1.5目だけ日本ルールと比較して黒に有利にはたらく、ということになります。

右の図のような単純なセキだとどちらのルールでも差がありませんが、複雑になればなるほどルールによる違いが大きくなりそうです。
ちなみに、セキがなく通常の形態のみの場合は、最後のダメを埋める期待値が黒にのみ0.5目分ある関係で、日本ルールコミ6.5目は中国ルールコミ7.0目と同等らしいです。
つまり、僅差の勝負になった場合は日本ルールと比較して中国ルールの方が白に0.5目分有利になるんだと思います。

1625371251-s-1.png1625371251-s-2.png1625371251-s-3.png

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件名 Re: ルールの違いによるセキの数え方
投稿日 : 2021/07/04(Sun) 13:15
投稿者 hope366
参照先
同じ局面図をtromp-taylorで分析してみました。
すると、推定目差の表示に関して日本棋院のAIと全く同じである「黒12.3目有利」と表示される瞬間がありました。探索数を増やしていくとこれよりも少し黒のリード分が大きくなるみたいです。

KataGoをダウンロードしてきて何も変更を加えずに動かすとデフォルトのtromp-taylorが適用されるので、日本棋院のAIはこのパターンなのではないか?というのが自分の中では有力になってきました😄

普段はほとんど使わない機能ですが、今回のような分析をする場合はワンタッチでルール変更ができる機能はとても便利ですねsml_sml.gif

1625372115-s-1.png

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件名 Re: ルールの違いによるセキの数え方
投稿日 : 2021/07/04(Sun) 18:25
投稿者 Ted
参照先
日本の本因坊戦にわざわざKataGoの中国ルールを使わなくても良いですよね。
どなたか日本棋院にKataGoには日本ルールもあることを教えてあげて下さい。(^^♪
「複雑度」の表示も「不確実性」に変わります。
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