賭博師ジャック 3巻


第3回 真昼の勝負

ジャックと少女は、奥のテーブル席に向かった。
そこはギャンブル専用なのか、
丁寧にニスで磨き上げられている。
言葉を交わすこともなく、2人は席についた。
ジャックが壁を背に、少女はそれに向き合う形で。
ゴロツキどもはそんな2人の様子を盗み見ている。
2人の勝負が気になって仕方がないようだ。
揃いも揃って聞き耳を立てているらしく
酒場の中は不気味な沈黙に包まれた。

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少女はポーカーの勝負を挑み、
ジャックは黙ってこれを受ける。
2、3の隠語でルールを確認すると
最後に賭け金の額を決める。
1勝負100ミラ――酒代にもならない額だが、
「子供相手じゃ、これくらいがいい。」
と、ジャックは一方的に話を進める。
カードを配るのはさっきのチンピラだ。
ジャックはチンピラに軽く目配せする。

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初戦――
お互い一度だけカードを交換する。
ジャックがコール。
少女が受けて立つ。
ジャック、ツーペア。
少女、ワンペア。
――ジャックの勝ちだ。
「はは、悪いな嬢ちゃん。」
彼はグラスになみなみと注がれた
琥珀色の液体を一息で喉に流し込んだ。
2回戦――

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お互い一度だけカードを交換する。
余裕の表れだろうか、
ジャックは大きなあくびをして見せる。
少女がコールする。
ジャックがそれを受けて立つ。
少女、ツーペア。
ジャック、ツーペア。
カードの強弱は……少女の側が強い。
――少女の勝ちだ。
「……………何!?」
グラスを弄ぶジャックの手がピタリと止まる。

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ジャックはすかさずチンピラに目をやった。
チンピラは目を泳がせる。
「どうかした?」
そう聞く少女は、
まるで仮面のようなポーカーフェイスだ。
「い、いや……何でもない。」
(まさかコイツすりかえを?
 ……………………面白い。)
――ジャックの目つきが変わる。

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彼は軽く咳払いをして
左手のグラスをテーブルに置く。
それからもう一度、咳払い。
……合図を聞いたチンピラがカードを手に取る。
「次は普通に配れ」という意味だった。
3回戦――
やはり、お互い一度だけカードを交換する。
ジャックがコール。
少女がそれを受けて立つ。
ジャックの手は……フルハウス。
「ははは、どうだ!」

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ジャックは得意げに手札を開く。
ゴロツキどもの間から忍び笑いが漏れる。
少女は無造作に自分のカードを広げた。
……7のフォアカード。
結果は少女の勝ち――
店の中はしんと静まり返った。





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