『サフィー 第3巻 〜ゆれる紫煙〜』サフィーのレイピアが月光を反射して弧を描く。 迎えるブラッドのカトラスは 弧を制するように直線的な動きを見せる。 サフィーは剣を交える相手に 初めて畏怖の念を抱いた。 事実、彼女の素早い突きを、 全て止めたのは、ブラッドが初めてだったのだ。 ブラッドもまた、彼女の天性のしなやかさに 少なからぬ驚きを感じていた。 そして何よりも、その力が何者かに向けられた 憎悪からくることに。 鋼と鋼が闇の星となる。 2人の弾む息が、銀河の雲と化す。 トルマリン子爵は、ガーネット男爵への 敵意さえも忘れ、逞しい壮年の剣士に立ち向かう 小柄な娘の剣さばきに魅了されていた。 一方、ガーネット男爵は、落ち着き払った仕草で パイプをくゆらせていた。 その煙の意味を、サフィーとブラッドが 知る由もなかった。 |