『サフィー 第6巻 〜悪夢〜』ろうそくに揺らめく影。 不気味に反った短刀の光。 幾夜も繰り返されてきた悪夢。 これは夢だと彼女には分かっていた。 見るに耐えない光景から目をそらせないことも。 影が狂気の刃をふりかぶる。 『逃げて!』 幾度も繰り返されてきた言葉。 壁に飛び散る深紅の飛沫。 血の流れと共に失われていく愛しい人の命。 亡骸を目の前にして、呆然とする幼い日の自分。 決闘後のブラッドの一言が思い返される。 『剣に秘めた憎悪は、自分を食い潰すぞ。』 幼い自分が、血塗られた剣を持つサフィーに変る。 固く結ばれた唇。束ねたブルネット。 そして見る者を震え上がらせる冷えたブルーの瞳。 『ちがう!』 サフィーは自らの悲鳴で、悪夢から解き放された。 |