『サフィー 第9巻 〜復讐の刃〜』サフィーは微動だにせず、 トパーズ国王が玉座から降りて来るのを待った。 『男であれば、宮廷剣士となれたものを。』 親しげに近付いてきた国王は、サフィーの帯びている 剣を見て力なく呟いた。 『・・・シルフィング・・・。』 かつて、この名剣を自在に操った剣士がいた。 その有能さ故に王族の秘密に通じ 決りきった死を遂げた。 その命令を下したのはトパーズ国王なのだ。 国王の異変に気付き、駆け寄る兵士よりも速く サーベルの切先が、国王の喉元に押し当てられる。 サフィーの瞳は今や、冷たく燃える宝石だった。 憎しみを糧に燃え続けるサファイア。 1歩踏み出せば、父を殺した男の命を絶てる。 だが、国王の老いた瞳に自分の姿を見たとき サフィーはブラッドの言葉を思い出した。 『剣に秘めた憎悪は、自分を食い潰すぞ。』 憎悪は新たな憎悪を呼びさます。 サフィーが戦ってきたのは、自分自身の中で 青く燃え続ける憎悪だったのだ。 彼女は静かにシルフィングを鞘に収めると ゆっくりとその場を立ち去った。 誰1人動こうとする者のない中、彼女の瞳の炎は 徐々に湖面の静けさへと変っていった。 女剣士サフィー 完 |