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かすかに紫がかった銀色の髪は、
月夜でも、
朝日に映えるススキの穂のように
美しく輝き、青みを帯びた瞳は泉よりも
澄んでいたという。
雪の夜、月の夜、風の夜、
昼夜を問わずして
ともしびをつむぐような巡礼の旅は
人知れず続いた。
気がつくと町には彼女がいた。
見た目には
ただの娘にしか見えなかった……。
もの静かで、
いつも淋しげな表情をした娘は
町から町へと旅を続け、
通り過ぎた町に
さまざまな言葉を残した。
彼女は人々に明日への警鐘を説いた。
進むべき道。
心掛けるべき、いくつかの事柄。
災いの波が、さざ波のうちに。
危惧が脅威へと変わる前に……。
それが自分の使命であるかのように
彼女は巡礼の旅を続けた。
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娘は未来を知る力を持っていた。
彼女は生まれついての魔女だった。
良い予言が当たれば人々は彼女を賛美し
悪い予言が当たれば
魔女の呪いとののしった。
白き魔女。
いつの頃からか、
人々は彼女のことをそう呼んだ。
それは今から20年ほど昔……
まだ世界にはカンドもチャッペルもなく
魔法があまり
知られていない時代のことだった。
魔女が畏怖と恐怖の存在であった頃の
ことである。
やがて、
白き魔女は人々の前から姿を消した。
今では消息を知る者もなく、
ただ、言い伝えのひとつとして
語られるに過ぎない。
昔、白き魔女と呼ばれる娘が
ティラスイールを旅した。
様々な言葉を残し、
白き魔女は姿を消した。
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