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『エル・フィルディン外史』
             ウォレス・マイヤー著

エル・フィルディンは
フィルディン王家の治める巨大な国家である。

ボレアス地方、ノトス地方、デュシス地方からなる
この世界が王家に統治されるようになったのは
ガガーブ暦258年のことである。

それ以前は多数の小国が栄えた時代であったが
王国の勃興以来、この地は1つの国として在り続けている。

だが、王家による支配の時代であれ
小国分立の時代であれ
いつの時代にも必ず受け継がれてきたものがある。

バルドゥス信仰がそれである。
その始まりは精霊神によって
人が育まれていた時代にまでさかのぼる。

フィルディン王家の治める巨大な国家。
私は、この世界の現状をそう表現した。
だが・・・

この世界の歴史を語るには、国家の興亡よりも
まず、バルドゥス教の歴史を紐解く必要がありそうだ。

あまたの国が変遷するなか
バルドゥス教は、いつの時代にもその名を歴史に刻み続けてきた。

大衆の文化、歴史に深く根ざしたこれなくして
エル・フィルディンの歴史を語ることはできない。

エル・フィルディンの歴史は
バルドゥス教の歴史でもあるのだ。

この史上最大の国家も、いまだ
いにしえの神々によって支配されているのかもしれない。