本棚の本
『フィルディン周辺の民俗学』
優しき風のイドゥン、麗しき水のスコティア
豊穣たる地のネフティス、猛き炎のザール。

これらは精霊神ドゥルガーの眷族に数えられる
精霊たちの名である。

それぞれが自然界を構成する4つの元素を司り
地域における、ささやかな信仰の対象として
祭られている。

野菜で有名なウルト村では
秋の収穫をネフティスに感謝する祭りが、毎年催される。
地元の村人たちが心安らぐひとときである。

村のなかに隠されたお札をさがしだし
ネフティスを奉った淵で、願をかけて流す行事は
ウルト村の農耕の時期を締めくくる儀式といえる。

ボルンとニューボルンではイドゥンにちなんだ祭りが催される。
お互いの町から代表者を出して行う、水上での格闘試合は
ボレアス地方で最も勇壮な行事の1つと言える。

また、エル・フィルディンには
それぞれの四精霊をまつった祠がかつて存在していたという。

いずれの祠も護人(まもりびと)と呼ばれる祭司にまもられ
その役目は同じ家系の者に受け継がれたという。

スコティアの祠はデュシス地方に、イドゥンの祠はボレアス地方に
ネフティスの祠はノトス地方にあったとされているが
ザールについては、もはや文献にも記されていない。

ネフティスの祠については、フィルディン近郊の
ウルト村周辺にあったのではないかと予測されるが
決定的な確証は得られていないのが現状である。

また、それぞれの護人の役目についても
現在なお受け継がれているのかどうか不明である。