真・英雄伝説
《疾風のラヴィン・第4巻》

              カラムロ・カラムス

《黒い瞳》
身構えて2人は振りかえる。

2人が振りかえった先では
長く伸ばした黒い髪が風にゆれていた。

「その古文書をよこしなさい。」

涼やかな声が、再び発せられた。

黒髪の少女が、黒い瞳を2人に向ける。
突然の事に
ラヴィンとマールは驚きを隠せない。
が、少女のまっすぐな視線を受け止めて
負けじとラヴィンが言葉を返す。

「やだね。」

黒髪の少女は表情を変えずに
白い手をラヴィンへと伸ばす。

その手は本の受け渡しを望んでいた。

「その本はあなた達には過ぎた代物。
 身に余る力は持ち主を滅ぼす・・・
 さあ、その本を私によこしなさい。」

少女の雰囲気に圧倒されつつも
ラヴィンは尋ねた。

「お前は・・・一体誰だ?
 そしてこの本は一体何なんだ。」

少女は黒い瞳をすっと細める。

「この世には知らなくてもいいことが
 たくさんある。
 ・・・まあいいわ。
 本は後日、必ず貰いうける・・・」

そう言って少女は
2人の横をすり抜けて
街道のほうへと歩き出す。

ラヴィンとマールは
怪訝そうに視線を交わす。

その、一瞬だった。

少女の姿は消えていた。

意見を求めるラヴィンの視線に
マールは小さく首をかしげた。

「今のは一体・・・」
ラヴィンのつぶやきは
風にのって相棒へと届く。

『本は後日、必ず貰いうける・・・』

だが少女のつぶやいた『後日』は
日を変えずに2人に訪れた。