真・英雄伝説
《疾風のラヴィン・第8巻》

              カラムロ・カラムス

《魔導師》
ルディの案内でたどり着いたその洞窟に
魔導師は居た。

ドルク、とルディが呼んだ魔導師は
くぼんだ瞳でラヴィンを見つめた。
その手元には、奪ったばかりの古文書がある。

「死にたいのなら、相手をしてやる・・・」

ラヴィンは親友の仇を前に
剣を握る力を強めた。

剣の風を切る音と、魔法の弾ける爆音。
戦いは長引くように見えた。

しかし、強さのケタが違った。
すぐに魔導師がラヴィンの背後を取る。

『やられる!』

そう思った瞬間・・・鈍い音がした。


ぽた。


と、赤黒い液体が地に落ちる。

それは、続いていくつも地に滴る。

「ルディ・・・」
ラヴィンはつぶやくようにその名を呼ぶ。

「貴様・・・裏切ったか・・・!」

髪と髭が逆立ち
握りしめた拳に血管が浮きたつ。
ドルクは背中に刺さったナイフを
いまいましげに睨んだ。

「裏切ったのではない・・・
 私は始めから最後まで
 平和を望んでいた。

 私はその信念の通りに行動しただけよ!」

まるで
自分に言い聞かせるようなルディの声。

間を置かずにラヴィンか剣をふるう。
そして・・・決着がついた。

「オオ・・・オ・・・」

息も絶え絶えになりながら
ドルクはラヴィンの前に膝をつく。

「・・・お前がこのまま
 我々に立てつくのなら・・・

 こちらにも考えが・・・」

苦痛に顔を歪ませながらも
ドルクは下卑た笑いを浮かべた。

「お前の・・・お前の、あの相棒・・・」

血を撒き散らしながらドルクが言葉を紡ぐ。

あの相棒・・・

『・・・・・・・・・・!!』

ラヴィンの心臓が、早鐘を打つ。
脳裏に金髪の親友の姿が浮かび上がる。