戦記小説
《剣帝ザムザ・第10巻》

《 対決 》
一瞬、馬上でザムザの体がよろめいたが
必死で意識をとどめた彼は
なおも剣を振るい
ミリガンの目前まで迫った。

ザムザの剣の鍔や装飾は弾きとび
体には敵の放った矢が
突き立ったままである。
満身創痍であった。

それでも、ミリガンの親衛隊と激突した
ザムザは常人ならざる働きで
道を切り開いていく。

そして、ついにミリガン本人と対峙した。

ミリガンの傍らに控えていた
騎竜アルブレヒトが主人を守るため
ザムザに襲いかかる。

その鋭利な爪がザムザの喉元に
届くかのように思えた瞬間
閃光が弧を描いた。

鋭い音を立てて
爪が上方に弾かれる。

アルブレヒトはたじろいだ。
人間で自分の一撃を阻んだのは
これまでミリガンのみである。

「さがれ、アルブレヒト。
 手助けは無用と言ったはずだ。」

自分の騎竜を制して
ミリガンが大剣を手に立ちあがった。

「ミリガン殿・・・ですね?」

ザムザは肩で息をしながら、馬を降りた。
疲労と出血で揺らぐ視界の向こうに
屈強の竜戦士が立っている。

「そうだ。
 貴公は剣帝と名高きザムザ殿だな。」

「一応・・・そう呼ばれています。
 今日はわけあって・・・
 私と勝負していただきたい。」

「・・・ここをどこだと心得る?
 貴公にとって敵陣のはず。
 改めて申し出ることではなかろう。」

「そうですね・・・すみません。
 では、参ります・・・」

両者とも剣を上段にかまえる。
数秒の沈黙のあと
機先を制したのはザムザであった。