戦記小説
《剣帝ザムザ・第2巻》

《 開戦 》
大陸東部に住む赤の部族は
40年以上前から部族内部で
争いが絶えない。

その争いは次第に各地に飛び火し
大陸全体に戦乱を巻き起こした。

この戦乱を終息させ
平和を打ちたてようと挙兵したのが
戦士ミリガンであった。

騎竜アルブレヒトにまたがり
瞬く間に大陸西部を
統一した彼が、今度は東部に
目を向けたのである。

「東方を征せよ!」という号令のもと
ミリガン配下の軍勢は
赤の部族が争いを続ける
この地に集結しつつあった。

赤の部族は内紛に苦しみながらも
先祖より受け継いだ土地を守るため
軍勢を調え、これを迎え撃とうとする。

それを指揮するのがザムザであった。

この日、両軍はすでに平原に展開し
それぞれの指揮官の合図を待っていた。
先端が開かれたのは正午すぎ。

「全員突撃!!」

ザムザの命令が響き渡った。

赤の部族は騎兵が先鋒となり
敵兵の集団へとなだれ込む。

ザムザは常に軍を指揮する身ではあるが
後方の安全な場所に控えて
指示を出すことを嫌った。

指揮官が先頭に立ってこそ
部下の兵たちも奮い立つことができる。
ザムザの信念の1つである。

そして、何よりも部族の闘技場で
培われた剣闘士としての誇りが
今も彼の中に息づいている。

剣闘士の血が彼をして
最前線に立たしめるのだ。

赤の部族独特の鬨(とき)の声とともに
ザムザ自身も白刃を閃かせて
敵兵に斬りこんだ。