戦記小説
《剣帝ザムザ・第7巻》

《 邂逅 》
「どちらさま・・・かな?」

問いながら、ザムザは
執務用の机に立てかけてあった
愛剣をたぐりよせて、鞘を払った。

呼吸を整える。

「くっくっくっ
 私は、妖術師テンペスト。
 闇の使徒にその名を列する者。
 今のはほんのあいさつがわりと
 思っていただきたい。」

「・・・・・・それはそれは。
 随分と無粋な挨拶で
 痛み入ります。」

ザムザの対応が気に食わないのか
テンペストは一瞬細めた目で
彼を睨みすえた。

「できれば、あなたも私の術で
 操らせていただくつもりでしたが
 さすがに並の精神力ではありませんな。
 しかし、ここに至ればあなた1人など
 どうでもよろしい。」

「・・・どういうことかな。」

ザムザには状況が飲みこめない。
ゆえにもっともな言葉であったのだが
テンペストは高揚した気分を
害されたかのごとく顔をしかめて
衝撃の事実を告げた。

「あなたの配下の軍全て
 すでに私の意のままということです。
 そこに倒れている
 あなたの部下のようにね。」

「っな・・・!!」

「おどろいてくれたようですね。」

テンペストは満足した表情で
あごをしゃくって、ザムザを見据える。

「十賢老の老いぼれたちは
 講和を結ぶつもりだったようですが
 このまま進軍していただきますよ。
 あなたのところに
 今、手紙が届いたでしょう。」

「貴様・・・爺さんたちまで・・・」

「朝になれば、あなたの命令なしでも
 傀儡となった赤の部族の方々は
 ミリガンの陣営に攻め込みます。
 あなたに止める手だてはありません。
 私を倒す以外にはね。」

テンペストがそう言い終わるやいなや
彼のいたその場所を白刃が薙いだ。
ザムザが斬撃を浴びせかけたのだ。

「やれやれ、穏やかな表情をしているが
 以外に激情の人ですな。」

「何のためにそのようなことを!?」

「教えてさしあげる義理はありませんが
 このままでは
 あなたがあまりにも惨めです。
 少しだけ話してさしあげましょう。」