戦記小説
《剣帝ザムザ・第8巻》

《 窮境 》
テンペストは誇らしげに語り始めた。

「この50年間
 私はさらなる力を求めて
 研究を続けてきました。

 そして、今より強力な呪術を
 身につけるには
 いにしえの力を
 蘇らせるほかないという
 結論を導き出しました。

 そのためには
 これまでにない
 大がかりな儀式が必要です。

 この大地により多くの血を
 扱わせることが前提のね。

 戦争は、それを実行するのに
 格好の機会です。
 逃がす手はありません。

 赤の部族の方々には
 このままミリガンの軍と衝突し
 血を流してもらいましょう。

 そして、私は儀式を完成させ
 その力をもって
 この世界を制するという算段です。」

語り終えたテンペストは満足そうに
1人うなずいた。

「貴・・・様・・・」

普段、おだやかなザムザも
この話を聞いて平静を保つことはできなかった。

故郷や部族への想いは人一倍である。
平静でいられるほうが
おかしいのかもしれない。

ザムザは手甲の裏から引き抜いたナイフを
3本投げるのと同時に突進し
幅広の剣を閃かせた。

瞬間、テンペストの体がまばゆい光を放った。
ザムザが視界を取り戻したときには
すでにその姿はない。

「くっくっくっ、申し訳ありませんが
 剣帝殿とまともに
 やりあう気はありません。
 私はこのあたりで
 失礼させていただきますよ。」

声だけが天幕のなかに響く。

「そうそう、言い忘れましたが
 あなたが戦いを防ぐため
 ミリガンに降伏を申し出ても無駄ですよ。

 私の傀儡となった赤の部族たちは
 決して攻撃をやめません。

 せいぜい明日の戦いは指をくわえて
 同胞が血を流すのを眺めていてください。
 くっくっくっ、それではご機嫌よう。」

ザムザは手元の剣を
激しく地面に叩きつけた。