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ベリアス卿
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・・・愚かなことをしたものだ。
創造神の一柱を、その手で倒してしまうとはな。
アヴィンよ、神剣の持ち主よ。
お前は、自分が何をしたのか分かっているのか?
お前は・・・世界の命綱を切ってしまったのだ。
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アヴィン
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たしかに・・・オクトゥムが目醒めたら
世界が滅亡するのを、防いでくれたかもしれない。
だけど・・・オクトゥムには
純粋なまでの、破壊と再生の意志しかなかった。
たとえ滅亡を防げたとしても
沢山の人が、犠牲になっていたに違いない。
そんなものが、正しい道であるものか。
滅亡を食い止める道は、他にもあるはずだ。
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ベリアス卿
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可能性に賭けてみるか・・・若いな。
私も・・・お前くらいの歳に啓示を受けたら・・・
このような道を・・・選ばなかったのかも知れぬ・・・
・・・だが・・・後悔だけはすまい・・・
それよりも・・・アヴィンよ・・・
理想とは・・・痛みなくして耐えられぬものだ・・・
お前は・・・
これから痛みに耐えなくはならぬぞ・・・
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アヴィン
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どういうことだ?
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ベリアス卿
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その若者の命は・・・すでに尽きていた・・・
オクトゥムの力によって・・・生かされていたのだ・・・
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アヴィン
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・・・えっ?
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ベリアス卿
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マイルよ・・・お前は知っていたはずだな・・・
オクトゥムを倒せば・・・己の命は無いと・・・
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マイル
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それでも・・・僕はアヴィンの力になりたかった。
それが僕の望みだったから・・・後悔はしません。
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ベリアス卿
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・・・そうか・・・
人の想いは・・・かくも強いものか・・・
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精霊ドゥルガー
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私の名は、ドゥルガー。
光と闇の相克より生まれたる始まりの精霊。
アイメル。
今まで、本当にご苦労様でしたね。
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アイメル
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ドゥルガー・・・あなただったんですね。
オクトゥムに飲み込まれた時に
私のことを守ってくださったのは・・・
・・・ありがとうございます・・・・・・
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精霊ドゥルガー
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どうか礼は言わないでください。
私はあなたに、重い運命を与えてしまったのですから。
あなただけでなく・・・代々の巫女たちにも・・・
ですが、光と闇が旅立った今・・・
あなたは運命から解放されました。
アイメル・・・あなたはもう自由です。
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アヴィン
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ちょ、ちょっと待ってくれ・・・
光も旅立ったってことは・・・
バルドゥスが、居なくなったってことか?
俺たちが倒したのは、オクトゥムだけだぞ?
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精霊ドゥルガー
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光と闇は表裏一体。
2つの神は、元々は同じ存在なのです。
あまりに巨きな存在であったがために・・・
2つに分かれた上で、この次元に現れていた。
それを・・・あなたたち人間が
バルドゥス、オクトゥムと呼んでいたのです。
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アヴィン
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そんな・・・
だったら、バルドゥス教会とオクトゥムの使徒が
今まで戦い続けた理由は、いったい何だったんだ?
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精霊ドゥルガー
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・・・それは、人が神を必要としたからです。
人は、1人では生きていけない弱い存在です。
かといって、自分たちだけで連帯することはできません。
光と闇という、分かりやすい器があって初めて
集団として集まり、生きていくことができたのです。
しかし、その代償として・・・
光と闇に分かれて戦うようになってしまった。
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ルティス
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・・・わかる気がします。
充たされぬ者は、敵を与えられることで
かりそめの充実感を得ることができる・・・
かつての私が、そうでしたから・・・
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精霊ドゥルガー
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ですが、神々の時代は終わりました。
人は今度こそ、神という大樹を離れて
自分の足で大地に立たなくてはなりません。
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賢者ガウェイン
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そうか・・
『かの剣を手にする者、妙なる輝きをもって
永きにわたる光と闇の相克に終止符を打てり。』
『人、大いなる巣立ちの季節を迎えん。』
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ミッシェル
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クロワール様がおっしゃっていた
教典の預言通りになったわけですね。
しかし、それが神々との別離を意味していたとは・・・
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精霊ドゥルガー
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怖れるのも無理はありません。
まるで、親に見捨てられた
幼子のような心境でいることでしょう。
でも・・・きっと大丈夫です。
朱紅い雫を輝かせるとき・・・
人はもはや、無力な存在ではないのだから。
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アイメル
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朱紅い雫・・・
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マイル
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不思議な響きの言葉ですね。
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精霊ドゥルガー
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人の情熱と想いのことです。
最初は、ほんの小さな一滴に過ぎません。
しかしそれは、人々の間に落ちて
響きあうことで、大きな流れとなります。
運命を揺り動かすほどに強く、大きく。
そうすれば・・・奇跡すら起こせるでしょう。
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アヴィン
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ドゥルガー・・・
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賢者ガウェイン
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あなたも、旅立ってしまわれるのか?
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精霊ドゥルガー
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私は、始まりの精霊にして、冥府の番人。
この砕けた大地から離れることはありません。
しかし、光と闇が消えた今・・・
果てることのない眠りにつくことになります。
そして、大地から生命が姿を消した時・・・
私はもう一度だけ、目醒めることになるでしょう。
・・・そうならないように祈っていますよ・・・・・・
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アイメル
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ドゥルガー・・・ありがとう。
お母さんみたいに、私たちを包んでくれて。
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賢者ガウェイン
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・・・ドゥルガーも永き眠りについた。
神々が消えた時代を・・・
俺たちは自分の足で歩かなくてはならないのか。
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アヴィン
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それに・・・ベリアスが言ってたな。
近い未来に、世界を揺るがす災いが起こるって。
本当に・・・人の力だけで解決できるんだろうか?
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ミッシェル
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しかし、そうなると・・・
ガガーブの果ての調査をする必要がありますね。
災厄は、ティラスイールとエル・フィルディン以外の
もうひとつの大地で起こっている可能性が高そうです。
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アヴィン
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ミッシェルさん、先約って?
ひょっとして故郷に帰っちゃうの?
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ミッシェル
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いや、トーマスさんと約束してるんですよ。
プラネトス号で、ガガーブを越えるのに協力すると。
どうやらトーマスさんは、プラネトス号を
より早く、頑丈な船に改造するつもりのようです。
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賢者ガウェイン
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ガガーブの彼方を調べることは
エル・フィルディンの平和のために意義があることだ。
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コンロツド男爵
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トーマス君ならば、やってくれるでしょう。
ベリアス卿が真実の島で見たという啓示・・・
それが本当ならば、まったくもって由々しき事態だ。
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マーティ
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エル・フィルディンという、狭い世界を越えて
新たな世界を知る必要が出てきたということですね。
これは・・・今まで以上に忙しくなりそうです。
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それから・・・
季節はめぐり、しばらくの時が流れた。
バルドゥス教会によって発表された
神々の時代の終わりと、人の時代の始まり・・・
それによってもたらされた衝撃から
エル・フィルディンは徐々に立ち直りつつあった。
神々が消えた時代。
巣立ちを迎えた人々は
夜明け前の暗がりに迷っていた。
道を照らすのはただひとつ。
胸の奥で輝く、朱紅い雫。
たとえ小さな雫でも
想いと想いを重ねれば・・・
奇跡を起こす流れとなる。
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