【第12巻 紅蓮の悪魔】
悪魔人形《カラミティ》が地を蹴りました。
反動をつけて、一瞬で間合いを詰めてきます。
ペドロの反応が、ほんの少し遅れました。
後ろの王女に悟られたくなかったからです。
そこに生じた、わずかなスキが致命的でした。
まず、剣が宙にはじかれました。
続いて、凶爪が立て続けに叩き込まれ
青い胸甲がバターのように抉られました。
『ほーら、どうしたのさぁ?』
尻尾がしなり、すらりとした両腕が
ぐしゃりと無残に潰されました。
『くふふ、捕まえた♪』
鉤爪が、羽根飾りの兜を鷲掴みにすると
蒼騎士の爪先が、大地から離れていきました。
『や、やめろぉぉっ!』
丹誠こめて作った初めての人形が
めちゃくちゃに壊されてしまう・・・
ペドロは、我をわすれて駆け寄りました。
『せっかちさんだなぁ。
心配しなくても、返してあげるのに』
紅い悪魔は、蒼騎士を高々と持ち上げ
ペドロに向かって投げ飛ばしました。
『ぐふっ・・・』
全身を衝撃が襲って、ペドロと蒼騎士は
おり重なるように芝生に叩き付けられました。
『もう、やめてください!』
王女が、大の字に両手を広げて
人形師の前に立ちふさがりました。
『この身をあなたに預けます。
そのかわり、これ以上の暴挙は許しません!』
つづく
|