【第17巻 そして少年は男になる】
しなやかな豹のように
窓から滑り込んできたのは
蒼い甲冑を身につけた、長身の騎士。
そして、帽子をかぶった小柄な少年でした。
『ティーア様、すみません。
ちょっと遅れてしまいました』
『ペドロ様・・・
やっぱり、来てくださいましたね』
泣き笑いのような表情を浮かべる王女。
照れくさそうに、少年が微笑み返します。
2つの視線が、しっかりと絡み合いました。
『こら! 時と場所をわきまえんかっ!』
すっかり無視されてしまった公爵は
口からアワを飛ばして喚きました。
一方、公爵の副官は、こっそりと
縛られた王女の背後に忍び寄りました。
副官が、王女の肩に手をのばした時。
弩(いしゆみ)のごとく蒼騎士が迫りました。
『ふごっ!?』
哀れな副官は
蒼騎士の平手打ちをくらって
壁に激突して気絶しました。
『そ、そんな出鱈目な・・・』
真っ青になったガストン公爵は
転がるようにして部屋を出て行きました。
『ティーア様、急ぎましょう!
もうすぐ戴冠式が始まります!』
『はい!』
屋敷を脱出して、公爵を追いかける2人。
しかし、その行手をさえぎるように
緋色の影が、地響きと共に降り立ちました。
『悪いけど、邪魔させてもらうよ。
人形師は信用が1番だからね、うふふ』
仕事とは思えぬ楽しげな口調。
仮面の人形師、ハーレクインと
紅い悪魔人形《カラミティ》です。
つづく
|