人形の騎士
【第21巻 傀儡師たちの思惑】
少年少女と、1体の人形が
足取りも軽く王都に向かった頃・・・

仮面の人形師は、焦げた人形に乗って
深い森をひた走りに進んでいました。
ふと立ち止まって、木陰に語りかけます。


『いるんでしょ、カプリ爺さん?』


『ふん。気付いておったか・・・』


ペドロの師匠、カプリが現れました。
例によって《黒法師》と一緒でしたが
奇妙なことに、人形の両腕がありません。

『思った通り、青い人形の腕は
黒法師のパーツを使って直したんだね。
どうりで、動きがいいと思ったよ』

『まあ、ペドロとお前さんとでは
あまりに実力の差がありすぎるからの。
ハンデを付けさせてもらったまでじゃ』


しれっと言う老人形師に
ハーレクインは肩をすくめました。

『ま、楽しませてもらったからいいけど。
でも、今回の件を《十三工房》に知られたら
ペドロ君も、タダでは済まないんじゃない?』

十三工房。
その不気味な言葉を耳にした途端
カプリは、表情を強張らせました。


『うふふ。それじゃあ、近いうちに』


含み笑いを残して、仮面の人形師は
深い森の奥に消えていきました。


『人形師が1度は通る道じゃ・・・』


老人形師は、沈んだ声で呟きました。
まるで自分自身に言い聞かせるように。


               つづく