【第22巻 大団円〜ひとときの安らぎ】
王宮の午後は、中庭での茶会で始まります。
女王陛下はいつものようにポットを傾けて
2つのカップに、紅茶を注ぎわけました。
『さ、どうぞ召しあがれ』
『いただきます』
カップを手にした少年の後ろには
蒼い甲冑を身につけた騎士がいました。
ただし、彼が口を開くことはありません。
『結局、公爵はどうなったんですか?』
戴冠式の夜、ガストン公爵は
家臣とともに行方をくらましました。
なにしろ、大勢の国民の前で
王女に即位を宣言されてしまったのです。
事態を静観していた近衛騎士団も
土下座して、新女王に忠誠を誓うしまつ。
公爵が、王女誘拐の罪に問われる前に
亡命を企てたのも無理はありませんでした。
『叔父上は、帝国に身を寄せています。
私の縁談相手として交渉していた第2皇子に
つてがあったようですね』
ここで、女王はくすりと微笑みました。
『ただ・・・先方には
露骨に迷惑がられているようです。
ちょっと、可哀想かもしれませんね』
『同情することありませんよ。
まったく、ティーア様は人がいいんだから』
正直なところ、ガストン公爵が
このまま黙って引き下がるとは
どうしても思えないペドロでした。
それに、不気味な仮面の人形師
ハーレクインの動向も気になります。
互いに面識があるようでしたが
師匠のカプリは、言葉を濁して
なにも教えてくれませんでした。
いずれにしても、近いうちに
もう一波乱あるに違いありません。
ペドロは蒼騎士の改造を決意しました。
『もう、ペドロ様ったら』
ちょっと拗ねたような口調に
ペドロは我に返りました。
『お茶が冷めてしまいますよ?』
青空を映した、涼やかな瞳が
"大丈夫"と安心させるように
いたずらっぽく輝いています。
照れくさくなったペドロは
ぬるまった紅茶で喉を潤しました。
人形の騎士・おわり
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