【第3巻 都の帰路にて】
ペドロは《蒼騎士》をつれて都を訪れました。 戴冠式をひかえ、にわかに活気づいた街角。 道行く人々が好奇の視線を投げかけてきます。 『なんと立派な騎士様だろうねぇ』 『さぞかし名高い英雄にちがいあるまい』 『戴冠式に出席されるのかな?』 澄ました顔で、蒼騎士の後ろを歩きながら ペドロは小躍りしたくてたまりませんでした。 《黒法師》を人間のように操るカプリに これで一歩近づいたような気がしたからです。 もっとも、自分が”従者”に見られるのは ちょっとばかり面白くありませんでしたが。 ペドロが、鼻歌を歌いながら 郊外にある人形工房に戻る途中のこと。 『いやっ・・・やめてください!』 木々の間から、悲鳴が聞こえてきました。 『へへ、助けなんぞあるものか!』 『あきらめて、大人しくしやがれ!』 見れば、ゴロツキ風情の男たちが 女の子を押さえつけているではありませんか。 真っ白なドレスに包まれた、華奢な肢体が いましめから逃れようと必死にもがいています。 帽子を目深にかぶったペドロは 指先を踊らせて《蒼騎士》を走らせました。 つづく |