【第11巻】
されど、天は無情なるかな!
バイロダインの兵士たちは、あまりにも大勢だった。
吾輩とマグノリア将軍が大暴れしたにもかかわらず、
後から後から新手が現れるのだ。
ルサルクU世は、よほど宝にご執心と見える。
我々は、断崖絶壁へ攻め寄せられて、
文字どおりの崖っぷちに立たされた。
背後・・いや、足下は海、前面には剣の林。
マグノリア将軍は吾輩を見た。
『飛び込むか?』
『ご婦人連れですよ。将軍の心配はしてませんが』
最後の掛け合い漫才を楽しむ我々の前に、
兵士たちがじりりと近づいてくる。
カメリア嬢が、剣の方へ一歩踏み出した。
『お願いがあります』
敵の刃を左の胸に近づけ、彼女は言い放った。
『あたくしの命は差し上げます。
でも、あなたたちは宝を手に入れるはずです。
約束通り、父を助けてくれるなら、あたくしは・・』
カメリアの言葉が途切れかかったとき、
兵士たちは狂ったように笑い始めた。
『そんな話がきけるものかよ?
この件に関わった者は、全て殺せと皇帝のお達しだ。
お前の父親だって、とっくに獄死したんだぜ』
この言葉は、我々の心臓を直撃した。
カメリアの背中が、小刻みに震え、やがて凍りつく。
『・・・約束・・・したのに・・・』
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