【第3巻】
『ひええ、勘弁してくれ!』 『お助け・・・!』 お決まりの悲鳴を上げて、野蛮人共は逃げていった。 吾輩は宙に浮かんだスティックを軽く操り、 サーベルを納めるように、 腰の辺りでぴたりと止めた。 後ろで震えているご婦人の方を振り返る。 そして、極上の笑顔で 『これは、手品です。タネも仕掛けもございません』 吾輩は手のひらをくるりと返し、 真っ赤なバラを出してみせた。 ご婦人は、まだおびえているようだった。 吾輩は懐からカードを取り出し、 扇形に広げて、空をあおいだ。 白いハトが飛び出す。 ハトは最初に出したバラの花をくわえて、 ご婦人の肩に止まった。 朝の光のようになめらかな金髪に花をさす。 『やあ、よく似合いますね。 願わくば、微笑んでいただけると もっとステキなんですが・・・』 |