【第4巻】
『カメリア』 麗しい金髪のご婦人は、そう名乗った。 その名の通り、椿のように赤い唇がふるえている。 なにがどう間違ったら、こんなに可憐な花が、 場末の酒場に紛れ込むというのだろう。 『追われているのです。 私が・・・これを持っているから』 カメリアは古い羊皮紙を差し出した。 あちこち破れたり虫食ったりしているが、 いくつかの図形と暗号のような文字が見て取れる。 『ははあ、宝の在り処を示したもの、ですかな?』 吾輩はモノクルをかけなおした。 『おわかりになりますの?』 『このくらいの暗号なら、朝飯前です』 『あたくし、知りたいんです。 この地図に印された宝物の在り処・・・』 椿の唇から、思い詰めた声がこぼれた。 水のように澄み渡る青い瞳が、助けを求めている。 吾輩は笑顔をつくって見せた。 『まず、ここに示されているのは鍾乳洞です。 入口は非常に険しい断崖にあって・・・』 |