【第6巻】
『やれやれ。やっと逃げおおせたかな』 吾輩はホッと息をついた。 とある貴族のお館の、屋根の上。 夜風が涼やかに吹き抜けてゆく。 吾輩は、乱れたブラウスの襟を直し、 夜の精霊たちに見られても恥ずかしくないように、 みなりを調えた。 吾輩を出し抜いた麗しい椿の花を思い出す。 酒場でのことも、計算ずくだったのか。 この手品師フロードをたばかろうとは。 一体、何の目的があってのことだろう。 昨夜、解いてやった宝の地図。 カメリア嬢は、宝の在り処を知るためだけに、 吾輩を利用したというのか。 ・・・ふん、気に入らん話だ。 何が起きているのか確かめてやるぞ。 |