【第7巻】
吾輩は眼下に広がる景色を見た。 はるか下の方に、紺碧の海が広がっている。 宙に浮いた己の足と、白く断崖を咬む波打ち際との 距離が違いすぎて、めまいがする。 この身を支えているものと言えば脚ではなく、 上に伸ばした腕、それも右腕一本きりだ。 『あなたがいけないのよ』 椿の唇から、かすれた声が漏れた。 吾輩は、断崖にぶらさがったまま、 カメリアの顔を見た。 『こんなところまで来なければよかったのに。 おとなしく、将軍に捕まっていれば、 生きていられたのに』 『そうかもしれませんね。 のこのこと、地図の場所へ来てみなければ、 あなたのそんな顔を見ないで済んだのかも』 吾輩は、最後まで軽口を叩いてみた。 だが、それっきりで腕がしびれ、落ちた。 |