クラップス Craps

1、はじめに

 クラップスは別名をセブン・イレブン(Seven Eleven)と言い(某コンビニ店の名称の謂われでもある)、 最も変化と連続性に富んだアメリカ人好みのダイス(サイコロ)ゲームである。
 クラップスの原型は12世紀に十字軍がアラビアから持ち帰ったア・ザール(アラビア語でダイスを意味する)というゲームと言われる。このゲームはイギリスでハザード(Hazard)と呼ばれ何世紀も遊ばれたのち、フランス人によって18世紀にアメリカ南部、ニューオーリンズに持ち込まれて以来、アメリカ人に愛好されるようになった。
 ハザードでは2つのダイスの合計が2、3、12の場合は負けであることから、これを英語でクラブス(蟹、ゾロ目などの意)と呼んでいたものが、アメリカでゲーム名称をクラップスに転化されたものと考えられている。
 20世紀初頭、客はシューター(子)にも胴元(親)のどちらにも賭けられるという画期的なルール改正がなされ、それまで横行していたイカサマダイスの存在意義が無くなったことから、1915年にシカゴのカジノで採用されて以来、アメリカのカジノでは最も人気の高いゲームの一つとなった。

<クラップスのテーブルレイアウト>

2、基本ルール

 クラップスのテーブルレイアウトは複雑で周囲には何人もの係員が立っているので初心者には近寄りがたい雰囲気があるが、基本の賭け方は難しくない。2つのダイスを客が順番に投げて、その合計数が参加者全員の勝負の基本となる。ダイスを転がすことをロール(Roll)と言うが、このゲームではロールに2種類ある。ゲームの最初のロールであるカムアウトロール(Come out roll)とゲーム途中のポイントロール(Point roll)の2種で、それぞれのロールには賭け方に固有のルールがある。
カムアウトロール
 前のゲームで7が出てテーブルのチップがすべてカジノに取られたり配当されたりして片づけられたあと、次のシューター(ダイスを投げる役目の客)が新たなゲームを始めるためにダイスを投げることをカムアウトロールと言う。
 ここで7、11が出るとパスライン(Pass Line)に賭けていた客が勝ち、ドントパスライン(Do'nt Pass)に賭けていた客は負ける。2、3、12が出ると逆である。(なお、シューターはパスラインかドントパスのどちらかに必ず賭けなければならない)。カムアウトロールで勝ち負けが決まれば次のロールは再びカムアウトロールであるが、勝ちでも負けでもない目(4、5、6、8、9、10)が出ると、そのとき出た数字がポイントと呼ばれ、次に述べるポイントロールが始まる。

ポイントロール
 ポイントが決まった以降、シューターが投げることをポイントロールと言い、次にポイントの目または7が出るまで何回でもダイスを投げることになる。この間に出た目に賭けていた客には配当がある。こうしてダイスを投げ続けてポイントの目が出るとシューターの勝ちとなり、同じシューターで新たなゲームが始まる。しかし7が出るとシューターの負けで、次の客がシューターとなり新たなゲームが始まる。
 つまり、ゲーム進行を簡単に言えば、1人のシューターのカムアウトロールが2、3、7、11、12なら即座に勝負がつく。それ以外の目ならポイントロールのゲームが始まり、次ぎにポイントの目または7が出るまでそのゲームは続くことになる。


3、賭け方の種類
ラインベットとオッズベット
(1)、パスライン(PASS LINE)
 ラインベットはカムアウトロールの前に限って賭けることができる。テーブルにPASS LINEと書かれた部分にチップを置く。シューターがダイスを投げて(カムアウトロール)、7か11が出れば1対1の配当がある。2、3、12が出ればチップを没収される。
 カムアウトロールで勝ち負けがつかなければチップはそのまま置かれ、ポイントロールでポイントの目が出れば1対1の配当を受け、7が出れば没収される。

(2)、ドントパス(Don't Pass Bar)
 パスラインベットとは反対の賭けである。7か11が出れば負け、2、3、12が出れば勝って1対1の配当がある。ポイントロールになった場合は7が出ると勝てる。
 なお、ラインベットのカジノ控除率は1.41%である。

(3)、オッズベット(Odds bet)
 ポイントが決まったとき、ラインベットに追加して賭けられるサイドベットのこと。下表のようにダイス2個を投げて出る目の確率は一定ではない。このサイドベットへの配当は確率通りに支払われるから、オッズベットに対するカジノの控除率はゼロである。
 例えば、パスラインに$10賭け、ポイントが8となってオッズベットを$20にした場合、ポイントロールで再び8が出れば、パスラインへの本来の配当が1対1の$10であるのに対してオッズベットへの配当は7の目と8の目の出現率の比6/5をかけて$24となる。
 ドントパスに賭けた場合も同様にオッズベット(賭け増し)ができる。ポイントロールで7が出れば勝ち、その配当はパスラインオッズと反対の率になる。
 オッズベットは最初の賭け金がレイアウトの上にある間は、そしてポイントが決まったなら、いつ賭けても良いし、いつ中止して賭け金を戻しても良い。
パスラインへのオッズベットの確率と配当
ポイント出現率7の出現率勝負比配当
3/366/363/61対2
4/366/364/62対3
5/366/365/65対6
5/366/365/65対6
4/366/364/62対3
103/366/363/61対2
カムベット、ドントカムとオッズベット
(1)、カムベット(COME)
 ポイントロールの間はパスラインやドントパスには賭けられないが、そこに賭けるのと同様の賭けがカムとドントカムである(カジノ控除率も同じ1.41%)。これはポイントロール中いつでも賭けることができる。
 カムに賭けると次のロールで7か11が出た場合勝ちとなり、2、3、12が出ると負けになるのはカムアウトロールでのパスラインへの賭けと同じである。勝ち負けに関係ない目が出た場合は、その賭けに対する新たなポイント(カムポイント)ができ、ポイントロール中にカムポイントの目が出れば何度でも配当される。
 例えばポイントが8でのポイントロール中にカムに賭けて6の目が出た場合、その賭けへのカムポイントは6となる。その後6が出れば1対1の配当を受けることになる。6が出ても7アウトするまではポイントロールが続くから、6が何度も出れば配当も何度も受けられることになる。7アウトせず何度もシューターが投げ続ければ、カムに賭けた者への配当が何度もなされるから場はホットになり、ホットロールと呼ばれるクラップス独特の醍醐味を味わえる場面となる。
 なお、ポイントロールでポイントの目が出ればシューターの勝ちとなり新たなカムアウトロールとなるが、カムポイントにある賭け金はそのまま置いたままとなる。この賭け金は次に7が出れば負け、カムポイントが出れば勝ちとなる。

(2)、ドントカム(Don't COME)
 ポイントロール中にドントカムに賭けるのはカムアウトロールでのドントパスとまったく同じである。次のロールで勝負がつかなければ、その後に7が出れば勝ちとなり、カムポイントが出れば負けとなる。
 ポイントロールでポイントの目が出た場合、この賭け金はそのまま置かれ、次に7が出れば勝ち、カムポイントが出れば負けとなる。

(3)、オッズベット
 カムベットまたはドントカムの勝負がつかずカムポイントに移動すれば、これへのオッズベットができる。配当も上に述べたものと同様である。オッズベットへの配当はカジノの控除率がまったく無いから可能なら必ず賭けたほうが良い。オッズベット賭け金額の上限は本来のカムベットまたはドントカムへの賭け金の2倍までというカジノが多いが、時には何倍ものオッズベットを許すカジノもある。ディーラーに "Odds to the 5"などと言ってチップを渡す。

 ポイントロールでポイントの目が出た場合、次のカムアウトロールでオッズに賭けたチップをオンにするかオフにするか(つまりカムアウトロールの目による勝負に参加するか否か)を選択できる。オッズ以外の本来の賭け金に対してはこの選択は無い。

プレイスベット
(1)、賭け方の基本
 カムに賭け、カムポイントが決まってからオッズベットし、またカムに賭けるという手続きを省略して、直接ポイントナンバー4、5、6、8、9、10の6ヶ所のどこにでも好きなだけ賭け金を直接置く賭け方がプレイスベットである。ディーラーに "To place the 5"などと言ってチップを渡す。
 ポイントロールでポイントの目が出た場合、ブレイスベットのチップは一時的に無効状態(オフ)となる。カムアウトロールで7が出ても、プレイスの目が出ても勝負には関係しない。(これをオンにする選択もできる)。また、カムアウトロールで決まった新たなポイントに賭けていたプレイスのチップは返してもらうか、別の場所に移動してプレイスするか選択できる。返してもらう場合は"Down"、移動する場合は"Number 5"などとディーラーに指示する。
 プレイスベットはいつでも取り下げることができ、追加して賭けることもできる。なお、プレイスベットにオッズベットすることはできない。

(2)、プレイスベットの配当と控除率
プレイス勝ちダイスの目負け勝負比配当控除率
1/25対96.67%
2/35対74.0%
5/66対71.52%
5/66対71.52%
2/35対74.0%
10101/25対96.67%


バイベットとレイベット
(1)、バイ(Buy)ベット
 4と10のポイントに対して賭け金の5%のコミッションを払って賭けるバイベットの控除率(コミッションを含めて4.76%)はプレイスベットの控除率(6.67%)より有利である。よってプレイスベットでは5、6、8、9に賭けるのが普通である。
 バイベットはプレイスベット同様いつでも取り下げができる。取り下げた場合は先払いした5%のコミッションも返される。
 また、バイベットもカムアウトロールの時にはオフとなるが、希望すればオンにもできる。
バイポイント勝ちダイスの目負け勝負比配当コミッション控除率
1/21対2賭け金の5%4.76%
10101/21対24.76%

(2)、レイ(Lay)ベット
 バイベットと正反対に7が出れば勝ち、指定したポイントが出れば負ける賭け方をレイベットと言う。5%のコミッション(最低$1)を払いポイントナンバーを指示する。
レイポイント賭け金単位勝ちダイスの目負け勝負比配当コミッション控除率
$402/12対1$12.44%
$303/23対23.23%
$246/56対54.00%
$246/56対54.00%
$303/23対23.23%
10$40102/12対12.44%

 レイベットもプレイスベットやバイベット同様にいつでも取り下げられる。取り下げた場合5%のコミッションは返される。
 また、レイベットはカムアウトロールの時にもオンとなる。


その他の賭け方
(1)、フィールド(Field)ベット
 この賭けはいつでもでき、FIELDと書かれた部分にチップを置いた後のダイスロールで勝負が決まる。2、3、4、9、10、11、12の目が出ると勝ち、5、6、7、8の目が出れば負ける。配当は2、12以外が1対1、2、12が1対2またはカジノによっては1対3である。
 この賭けの控除率は5.5%(2、12の配当が1対3の場合は2.7%)であるから他の賭けよりも分が悪い。

(2)、プロポジションベット
 テーブルレイアウトの中央に細かい絵が描いてある部分に賭ける。控除率は悪いからメインに賭ける場所ではない。
賭ける場所勝ちダイスの目負けダイスの目勝負比配当控除率
Seven他の目1/51対416.67%

ThreeCraps
他の目1/171対1416.67%

TwoCraps
他の目1/351対2916.67%

TwelveCraps
12他の目1/351対2916.67%

Eleven
11他の目1/171対1416.67%
Any Craps2、3、12他の目1/81対711.1%

 この他、プロポジションベットの周囲にC-Eと書かれたものがたくさんある。これはAnyCrapsとElevenとを同時に賭けるもので、例えば$10賭ければ、それぞれ$5ずつの賭けとみなされる。

(3)、ハードウェイ(Hard Way)ベット
 これは2ゾロ、3ゾロ、4ゾロ、5ゾロに賭けるもので、1ゾロ(TwoCraps別名SnakeEyes)、6ゾロ(TwelveCraps別名BoxCar)が1回勝負であるのに対し勝ち負けにならない目が出たときは継続する賭けである。
ねらうゾロ目勝ちダイスの目負けダイスの目勝負比配当控除率
7とゾロ目でない41/81対711.1%
7とゾロ目でない61/101対99.09%
7とゾロ目でない81/101対99.09%
7とゾロ目でない101/81対711.1%

(4)、ビッグ6、ビッグ8
 テーブルレイアウトの両隅に大きく赤い字で6と8が描かれている。これは6の目が出るか8の目が出るかに賭けるもので、別々の賭けである。1回勝負ではなく、勝負がつかなければ継続する。
賭ける場所勝ちダイスの目負けダイスの目勝負比配当控除率
Big65/61対19.09%
Big85/61対19.09%

4、勝つための考え方

 クラップスは賭け方によってカジノの控除率が大きく変化する。控除率の悪い賭け方ばかりしていれば確実に損失が増えることになる。例えば控除率16.67%のSevenに毎回賭け、確率どおりに目が出たとすれば、55回ほどで元金が消滅することになる。
 したがってクラップスで賭けるとしたら、パスライン、ドントパス、カム、ドントカムおよびこれらへのオッズベットにとどめるべきであろう。あとはせいぜい6と8へのプレイスベットが許容範囲である。



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