1、丁半の歴史
丁半は賽賭博の中でもっとも有名である。時代劇などで盆ゴザを前にヤクザが壺を振る図はよく目にするところである。
賽賭博の起源は賭博の起源と同義であるが、中世になると今昔物語に七半と四一半の記述が見える。七半とは2個のサイコロの目の合計が7になれば賭金の半分をやりとりするもの、四一半は1と4の目が出た場合、賭金の半分をやりとりするものかと推定されている。
江戸時代後半期になると賽賭博は丁半や大目小目が主流となるが、中世に大流行した四一半がどのように変化したものかは明らかではない。いずれにしても丁半は江戸時代に至って初めて現れたもののようである。
2、道具
丁半は2個のサイコロを用いて、目の合計が偶数(丁)になるか奇数(半)になるかを推定する博打である。
サイコロが2個あればどこでもできるが、賭場で一般的な道具立てとしては盆ゴザ(時代や地域によって異なるが畳状のものや花ゴザなどがある。布のみのものも用いられた。丁半の場合、周囲に大勢が座れるよう、畳数枚を並べた上に白布をかけた。)とサイコロを振るための壺ザル(サイコロを転がす道具。材質は藤で、中底に綿を入れて隆起させサイコロが弾むように作ってある)がある。
3、基本のルール
格式のある賭場では、盆ゴザの中央に中盆と壺振りが相対して座る。丁に賭ける客は中盆側、半に賭ける客は壺振り側に座る。用意が整うと中盆が「壺っ」と声をかけ、参加者は盆ゴザの上に丁半それぞれへの賭け金を置く。丁は中盆側、半は壺振り側である。丁半の賭け金が同額とならない場合、足りない側へ賭ける人を中盆や合力(その場を取り仕切る雑用係)が募集する。この際、募集に応じた者には負けても出目によっては勝負無しなどの特権が付与されたようである。どうしても丁半の賭け額に過不足がある場合は場主がその分を立て替える。その後「勝負っ」のかけ声で壺が開かれ勝負が決する。
場主(貸元)の収入はもっぱらテラ銭による。テラ銭は勝者への支払額から一定割合を差し引く。通常四分、時には五分から八分、また時には一割以上のテラ銭を取る場もあったようである。また6ゾロのとき一割など、目によってテラ銭の割合が変化する場合もあったという。
丁半に似たものに「四三」(しそう)に「四六」(しろく)というのがある。これは壺振りと親(胴)が同じで、丁半の賭け金に差があってもよい。差額を親が負担するが43と46の目が出たときは半払いでよい。テラ銭は親が勝ったとき一割、子が勝ったとき五分と、これはチョボ一と同じである。