チンチロリン

1、チンチロリンの歴史
 チンチロリンは比較的新しいゲームである。大谷通順によれば、チンチロリンのもとになったのは中国の大連で1931年に「一記者」によって報告された「打骰子(ダーサイヅ)」というゲームである。(『満蒙』1931年1月号) ダーサイヅとチンチロリンは全くルールが同じであるというから、チンチロリンは1930年代ぐらいに中国のいわゆる満州からもたらされたもののようである。
 さらに、1893年に在米中国人労働者の遊びとして「四五六(スンルク)」があったとの報告があり、このルールもチンチロリンと同様とのことである。また間接証拠ではあるが、1907年に中国で書かれた小説の中に出てくる「擲骰子(ジイトウズ)」というゲームも同様のルールと推察される。
 よって少なくとも19世紀末には、中国にチンチロリン様のゲームがあったことは、ほぼ間違いなさそうである。

2、道具
 チンチロリンに用いる道具はサイコロ3個とどんぶりがあればよい。どんぶりは牛丼のどんぶりでもラーメンのどんぶりでも何でも良いが、その中にサイコロを放り込んで「チンチロリン」と音を立てることが必要である。

チンチロリン

3、基本のルール
 サイコロ3個をどんぶりに落として同じ数が2個出た場合、残りの1個の目が出目であり、親の出目と比較して大きい数の者が勝つ博打である。同じ数が2個出ない(出目が無い)場合は振り直しとなる。振り直しは2回まで。それでも出目が無ければ負けである。例えば最初に661という目が出たら、この人の出目は1である。出目が確定したら数が少ないからと振り直すことはできない。
 ゲームの最初にまず1個ずつサイコロを振って親を決める。親は左回りに廻していく。親が決まると子は賭け金(全体として親が支払い可能な金額以内。これは博打の基本)を各自の前に置く。それから親がサイコロを振る。3回振っても親に出目が確定しなければ子に総付け(賭け金と同額を支払う)しなければならない。親に出目が確定すれば、次に右回りに子がサイコロを振り親の出た目と勝負していく。親に役や出目が無いか、1や123または「しょんべん」などで即負けした場合、続けて親をできる。親が受かったら次の親に廻す(逆に親が受かっている場合は続けられるというルールもある)。こうして参加者が全員親をやると1回戦終了である。
 チンチロリンには出目の他に以下の特殊な役になる目がある。これらの目が出た場合、即座に勝負が決する。

  111のピンゾロ……10倍配当
  222の二ゾロ……… 2倍配当
  333の三ゾロ……… 3倍配当
  444の四ゾロ……… 4倍配当
  555の五ゾロ……… 5倍配当
  666の六ゾロ……… 6倍配当
  ※2~6ゾロとも3倍配当、1ゾロに5倍配当などのルール、またはゾロ目を全部6の目と
   同じに処理するルールなど、さまざまなローカルルールがある。
  456 ……………… 2倍配当、親のみに適用されるというルールもある。
  123 ……………… 賭け金の2倍を支払う。
             親が出した場合は即座に子全員に2倍額を支払わなければいけない。
 また、親の出目が6の場合、子の賭け金をすべて没収できる。逆に1の出目を親が出すと即座に子に賭け金と同額を支払う。
 親と子の出目が一致した場合、引き分け、双方振り直し、親の勝ち、とさまざまなルールがある。
 なお、振ったサイコロがどんぶりから飛び出した場合、「しょんべん」と言って振った人の負けとなる。よって慎重にサイコロを片手につまみ、どんぶりの上から落とし込むようにする。

<参考文献>
大谷通順「近代における中国博戯の伝来と日本的変容」-チンチロリンと麻雀を例として-
大修館書店刊「日中文化交流史叢書5『民俗』」ISBN4-469-13045-1