おいちょカブ
1、おいちょカブの歴史
「かるた」は外来語の「カルタ」が転用されているところからも分かるように16世紀後半以降に我が国にもたらされたものである。これが一般に知られ流行したため、需要を満たす必要から国産品が作られて発展した。増川宏一は、初期の国産かるたを「天正かるた」と呼ぶのは天正年間(1573-1592)に製造されたとは断定できず、その頃に輸入された言い伝えを記したものかと推定している。
もともと賭博用具であった「カルタ」は日本で「かるた」となってもやはり賭博用具であった。天正かるたはその後さまざまな形態に変化していく。尾佐竹猛はかるた賭博を「メクリ系統」、「カブ系統」、「花かるた系統」の三大系統に分類している。歴史的にはメクリがもっとも古く、花かるたがもっとも新しい。尾佐竹は、カブは金吾かるたの系統でメクリの一分派または共同の始祖から分派したものと推定している。
おいちょカブと似たものに関西で最近でも行われている京カブがある、ルールの細部が少々異なるが基本的においちょカブと同じものであり、江戸中期には広く遊ばれていたようである。
なお、おいちょカブの語源はこのゲーム独特の数を表す語からきたもので、「おいちょ」は8、「カブ」は9を表す語である。
おいちょカブの数字の呼び方
一 | ピンまたはインケツ |
二 | 二ゾウまたは二寸 |
三 | 三太または三寸 |
四 | ヨツヤまたは四寸 |
五 | 後家(ゴケ)または五寸 |
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六 | 六法(ロッポウ) |
七 | シチケンまたはナキ(泣き) |
八 | オイチョまたはヤイチョ |
九 | カブ |
十 | ブタ |
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2、道具
近年はカブ札が手に入りにくいので花札やトランプで代用されることが多いが、本来は1~10、4種類40枚のカブ札を用いる。花札の場合は柳と桐を除く40枚を使う。花札の絵柄によって各月に対応する数字は「アトサキ」で説明しているのでご覧いただきたい。
仲間内で遊ぶ場合はなんでもよいが、賭場では花ゴザ、畳などのうえに白布をかけ、親(胴)が札を配る。廻り胴で遊ばれる場合が多い。
3、基本のルール
このゲームは配られた札の合計数(10以上の場合下一桁の数字)がカブ(9)か、カブに近い方が勝つ親と子の勝負である。
賭場では白い布をかぶせた盆ゴザの中央に親が座り、相対して張り子が並んで座る。親は40枚の札を切り(シャッフルし)左から右へ1枚ずつ4枚の札(張り札)を表にして置く。張り子はそれぞれ勝ちそうな張り札に賭ける。重複して賭けても良い。張り札には独特の名称があり、親から見て右側から「肩」「二番」「三番」「引き」という。
賭け金が出そろうと親は自分の前に1枚札を伏せて置く。これを台札と言う。親は次に4枚の張り札の上に今度は右から左へ1枚ずつ伏せた札を重ねていく。この2枚目以降の札を打ち札と言い、もし誰も賭けていない張り札がある場合には打ち札を表にして重ねる。
張り子はそれぞれの賭けた場所の打ち札を見て2枚の合計を計算し3枚目を引くかどうかを決定する。この時次のようなルールがある。「七ケン引き無し」「サンタに止め(引かず)無し」。つまり合計数が7以上の場合3枚目は引けない。3以下なら無条件で引く。
こうして張り子の引きが終了すると親は自分の台札を開き、2枚目を引く(親が2枚目を引くのは最初の打ち札を撒き終わった時点とするルールもある)。親は自分の2枚の合計数で勝てる張り子がいると思えば、ここでその張り子と勝負する。負けていると思う張り子とは3枚目を引いて勝負できるのが親の権利である。
親の特権として四一(シッピン)と九一(クッピン)ができれば親の勝ちとなる。張り子の特権はアラシ(3枚とも同じ数字の札)ができたときで、親は3倍の払い戻しをしなければならない。アラシの強いところは親が2枚目を引く前にアラシを宣言できるので四一や九一にも勝てることである。張り子にアラシができたとき親は同様にアラシを作らない限り負けとなる。双方ともにアラシの場合は本来の数字の合計で大きい方が勝つ。また親にアラシができると張り子は賭け金の3倍を取られる。
なお、親と子の目が同じ場合は引き分けであるが、親の勝ちとするルール、親と子の双方がブタ(0)になった場合のみ子の賭け金が没収されるというルールもある。
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親が四一を出した図
おいちょカブはやはり花札よりカブ札が似合う
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なお『歴史』で言及した「京カブ」には四一は無い。九一は親が無条件で勝つ。札の配り方などはおいちょカブと同様である。アラシはただのカブとして扱われる。ブタができると『笑い』と称してその勝負は無勝負となる。