欧米の麻雀


1、欧米への伝播
usa 麻雀はこれまでに述べているように19世紀後半になって誕生したゲームであるが、この頃、中国に進出していた列強(主として欧米各国)は治外法権の租界を中国各地に確保していた。もっとも有名なのが上海の租界である。20世紀になると上海のイギリス租界の中で新しいゲーム=麻雀が大流行した。このイギリス租界での麻雀の流行は点棒の登場をもたらし(「麻雀の成立と点棒」参照)、さらに麻雀が世界中に広まるもととなった。

ヨーロッパへは東インド会社のインド・ヨーロッパ航路によってイギリスを通して伝播した。1920年代にはヨーロッパ全域に広がり、主として上流階級の社交ゲームとして遊ばれるようになった。アガサ・クリスティーの「アクロイド殺人事件」(1926)にも麻雀を遊ぶシーンが登場している。
米国へは上海から太平洋を渡る航路を通して伝播した。長い船旅の無聊を慰めるため麻雀が好んで遊ばれた。欧米人の多い船上では役名など用語はすべて英語で呼称していたという(すなわちピンフは ALL CHOW、対々和は ALL PUNG、清一色が SAME COLORなど)。ちなみに日本郵船(株)でも英文で解説したパンフレットなどを備えて客に提供していた。
こうしてアメリカへ伝播した麻雀は格好の社交ゲームとして瞬く間に全米・カナダに流行し、多くの解説書が出版された。あまりに人々が熱中したために麻雀牌の供給が追いつかなくなり、輸入牌の他に米国独自の麻雀牌も作られるようになったという。
なお、欧米に最初に麻雀を紹介し導入に尽力したのはジョセフ・P・バブコック(Joseph P. Babcock)と言われている。

右上の写真は1920年代の報道写真。
アメリカに麻雀を紹介したJ.バブコック氏の夫人(右手前の白いドレス)が麻雀を教えているところ。

<麻雀博物館提供>


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麻雀書に掲載されたアメリカ婦人の麻雀風景 ロサンゼルスの高級ホテル「マリー・ルイズ」の麻雀ルーム
<麻雀博物館提供>

アメリカ合衆国の麻雀
欧米に伝播した麻雀は、流行し遊ばれているうちに日本と同様に独自の変化をとげる。当初は中国式ルールで遊ばれていたものが、サイド精算や役でも面倒なものは淘汰され、次第に各国独自のルールに変わっていった。アメリカでは1920年代初期にすでにチャールストン(後述)など独自ルールが登場している。
アメリカ合衆国でのルールの変遷を追うには資料が足りず、現代ヨーロッバの麻雀についても麻雀サイト以外まったく不明であるので、ここではアメリカで最も歴史のあるナショナル麻雀連盟(National Mah Jongg League、1937年設立)のルールを紹介するにとどめる。

[ナショナル麻雀連盟ルール]
アメリカの麻雀は日本や中国の麻雀とは大きく異なる。その最大のものは以下の3点であろう。
  1. 役は非常に多く、アメリカ独自のもので、連盟によって毎年改訂されている。
  2. 花牌やジョーカー牌を含み多くの牌を使用する。従って槓(KONG)の上に同一牌5枚(QUINT)組というものがある。
  3. ゲーム開始に先立ってチャールストンと呼ばれる不要牌の交換が行われる。

配牌の取り方までは日本や中国と同様である。取り終わると、各自が不要牌を3枚選び下家に渡し上家から受け取る。次に同様にして上家、対面と受け渡しをする。うまくいけば最大で9枚の有効牌と取り替えることが可能である。この作業をチャールストンと称し、トランプゲームからヒントを得たと思われる。
こうして親から順に摸打することになるが、目指す上がり役はアメリカ独自のものである。
以下に2000年ルールから役の一部を紹介する。

グループ牌の構成点数
2000(NEWS)NN E W SS DD DD 2000c35
2468FFF 22 44 666 8888x25
連数字consecutive run11 22 333 444 5555x25
13579FF 5 77 999 5 77 999c30
singles & pairsNN 11 33 55 77 99 SSc45
Fは花牌、ESWNは東南西北、Dはドラゴンすなわち三元牌をあらわし、0はジョーカーまたは白を使用する。
xは副露、cは手の内を示す。


こうした役で誰かが上がると支払いは次のようになる。
 栄和(ロン)の場合、放銃者が基本点数の2倍を支払い、他の2人が基本点数をそれぞれ支払う。
 模和(ツモ)の場合、他の3人がそれぞれ基本点数の2倍を支払う。

以上のようにアメリカの麻雀は日本麻雀とはまったく別のゲームである。連盟のルールには順子は無く、対子や刻子などから構成される役が多い。

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写真はルール表である。これは毎年改訂され、公式に認められる役が変わるので、卓を囲む4人が同一のルール表を持っている必要がある。

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3、おわりに
以上のようにアメリカ合衆国の麻雀は日本麻雀とは大きく異なる。欧州においても同様と思われ、使用牌もアメリカ同様に薄く、並べるためのラックを使用するという話である。この配牌を各自が並べておくラック(rack)は中国語で牌抬(ぱいたい)と言い、中国でも同様に薄い牌が使用された証左である。

写真はインデックスの付いた欧米用麻雀牌

欧州の麻雀事情は明確でないがいくつかの麻雀サイト(以下参照)をみるかぎりアメリカと同様のルール、また日本や中国のルールなどでも遊ばれているようである。盛んなのはオランダで多くの麻雀サイトがある。
ドイツの麻雀情報、Die Website der Deutschen Mah-Jongg Liga (DMJL) e.V.
イタリアの麻雀情報、Home Page Federazione Italiana Mah Jong
フィンランドの麻雀クラブ、KEJIMAJIANGMI
オランダの個人麻雀サイト、De Rode Draak Mahjong Website
オランダの個人麻雀サイト、Adrie van Geffen's Mah Jong Page

また今日ではインターネット上に麻雀のできるサイトが欧米でも多く、新聞も登場している。
オンライン麻雀のサーバー、Green Dragon Mahjongg Game
ヨーロッパの麻雀を扱った新聞、The Mah Jong Internet Newspaper
中にはインターネット麻雀で賭けをするサイトまである。こうなると少々行き過ぎであろう。Mah Jong Luck


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