(詰碁の創り方) 第9回
塚本惠一 著 [詰碁世界第14号(2002年7月発行)掲載]


前回までに詰碁のルールを一通り説明してきました。これで詰碁がどんなものかは大体理解して戴けたと思いますので、さっそく作ってみましょう。と言いたいところなのですけれども、第1回(本誌6号)の「生死不明形の検討法」も第2回の「アレンジ法」も第3回の「構想法」も「考え方は分かるが実際にやるのは大変」というところではないかと思います。
そこで今回は誰にでもできる「パクリ法」、おっとこれは言葉が悪いですね、絵画の世界に倣った「模写法」を紹介したいと思います。
模写は絵画の世界で古くから行われている勉強法で、要は名画をマネて描き写すことです。油絵などの場合なら、そっくり同じに描こうとしても自然にタッチの差が生じてしまいます。詰碁だと逆にちょっと変えることでさえ簡単ではないわけです。
それでも、ともかく自分のオリジナリティーを何かしら加えるという意気込みで、既存の作品に手を加えてしまうのです。
お気付きのことと思いますが、これは「アレンジ法」の一つです。しかし第2回に説明した実戦の盤面から詰碁を抽出することに比べれば、既存の詰碁にちょっと手を加えて別の詰碁を作ることの方が随分と楽です。
第6回の「移動法」は力を要する大がかりな「模写法」と言えそうです。今回は、そう、ちょっとだけ変えてみるのです。
もちろん、生死が問題の石を囲っている石の配置を変える程度では滅多に詰め手順が変わりはしないのですから、それでは別の詰碁にはなりません。
しかし、例えば生死が問題の石の外ダメの数を変えたりすると、元の詰碁とは様変わりする場合があります。

1図 黒先白死
2図 黒先コウ
3図 黒先?

1図~3図は外ダメの数で生死の状況が変わる基本的な例です。手順は?などと聞いてはいけません。自分が1図~3図の詰碁の作者になったと考えて、自力で正解手順と変化手順と失敗手順を決めなければなりません。そうすることで、石の形と手筋との関係がよく理解できるようになるのです。

一つ「模写法」を試してみましょう。4図は本誌「詰碁世界」第12号の中級問題です。

4図 黒先白死
5図 黒先?
6図 失敗
4図の黒1は当然ですが白2に黒3と珍しい1の一の筋を用いて白の眼を奪います。ところで2の左上の白石は何なのでしょう。それを外したのが5図ですが、6図の黒1黒3では白4で凌がれます。4の上に白石があれば攻め合い勝ち、と、そういう意味の石だったのです。ですが今回は詰碁を作ろうとしているのです。5図は手なしなのでしょうか?

7図 5図の解
8図 新詰碁1
9図 新詰碁2
結論から言えば7図の黒1黒3が手順でコウになります。ただし黒1で aや bに打つ余詰もあるので8図のように修正して出来上がりです。なお、4図の白2の左上の石は不自然なので、本来は9図の形に整理すべきものだと思います。こういうところに神経が行き届くようになれば詰碁の作図も一人前と言えるのです。



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