(詰碁に強くなる法第1回)「やさしい詰碁をたくさん覚える」
塚本惠一 著 [詰碁世界第2号(1999年7月発行)掲載]



(やさしい詰碁をたくさん覚える)
この会に入られた方の中には級位の方も多く、詰碁を強くなることを願われていると言う話を伺いました。実戦の死活を正確に読めるようになれば勝率アップは疑いなしですから、もっともな話です。
ひとつまた上達法でも書いてみようかと思います。
『また』というのは拙著「算月」にも「詰碁のいろは」という入門書を含めているからですが、少し違った視点から上達のための秘訣を紹介してみようという次第です。

第1回のテーマは「やさしい詰碁をたくさん覚える」です。
例えば趙治勲先生の「一手の詰碁大集合」や日本棋院の「よく分かる石の生き死に」がおすすめです。その後は日本棋院の「強くなる実戦死活」や「新早わかり死活小事典」に進まれると良いでしょう。
詰碁は考えて解くものと思われがちですが、強い人はシラミツブシに読むことより、記憶したパターンから手筋を引き出していることの方が多いのです。いわゆる「ひらめき」です。
実例で説明しましょう。まず1図の詰碁を3分間だけ考えてください。


  1図 黒先白死
解けたという方は十分にお強く、この講座は必要ないかと思います。
解けない方は、一度忘れて、2図の詰碁を考えてください。

2図 黒先白死
3図 2図の解
3図の黒1に対し、白は1の左には打てません。そこを黒がつぐことになるので3目中手の白死です。
2図と3図を覚えておいて、4図の詰碁を考えてください、

4図 黒先白死
5図 4図の解
簡単ですよね。続けて行きます。
4図と5図を覚えておいて、6図の詰碁を考えてください。

6図 黒先白死
7図 6図の解
もうお察しの通り、覚えている詰碁の形に導くわけです。
ただし、8図の変化は読んでおく必要があります。



  8図 7図の変化
もうお分かりのことと思います。6図は1図と同じものです。
このように、2図の1手詰めや4図の3手詰めを覚えておくと、1図のような難しい詰碁を解くときの助けになるのです。
詰碁に強い人は、このような簡単な詰碁を数多く覚えていて、読みの途中でそれらがひらめくので、にらみ詰めのような芸当もできるのです。
今回のテーマは「やさしい詰碁をたくさん覚える」でした。


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