今回から詰碁のルールについて説明したいと思います。「ルール」と書くと難しいことのように思われるかもしれませんが、どのような問題なら詰碁と言えるか、詰碁の解答はどう書くべきか、という話です。 本誌「詰碁世界」の「創作詰碁応募要領」には以下のように記されています。
こういうルールをはっきりさせておかないと、作図者が「詰碁ができた」と見せたときに解図者が「詰碁になっていない失題」とクレームをつけたり、解図者が「解けた、手順はこう」と言ったときに出題者が「後手が最強ではないから不正解」などともめる心配があります。
いわゆる「味悪の詰碁」というものがあります。出題図の配置の外側まで逃げ回ることができるが、周りに何もないなら逃げ切れない、という類いの問題です。発陽論の名人因碩などはむしろ味悪を楽しんでいる風ですが、故前田陳爾九段や橋本宇太郎九段は「味悪は避ける」流儀でした。
しかしながら、初手に限っても、無駄手を排除するのは容易なことではありません。2図は黒の外ダメが空いているので3図の黒1が成立して黒生きとなる問題です。が、これには4図の無駄手が隠れています。で、厳密に言えば1図は本誌には出題不適切となります。だからと言って「2図は失題」というのは囲碁人の慣例に反すると言うべきでしょう。
詰碁の作図で大変なのは余詰さがしと余詰消しです。今回のテーマである初手の無駄手消しも、繰り返せば、初手の余詰消しの力をつけるのに役立つものです。簡単な余詰消しの例を紹介しましょう。 8図の狙いはサガリキリと関連する黒1のオキですが、9図の黒1のハネも成立するので、これでは失題です。この9図のハネを消すのは簡単で10図のように白のハネを一つ加えるだけで済みます。 11図は隅の六目が死形であることを利用して白からのサガリやコスミの効きをなくせば白死という死活問題です。昔、こういう図が「詰碁」として出題されているのを見てあきれたことがありました。黒は a 〜 e のどこでも白を殺せるからです。これは12図の形にすれば初手を a に限定できます。後にある本で13図を見て、巧い、と感心させられたものです。余詰を消すために思いきった図の変更が有効なことも多いものです。 |