(大中手) 本講座の第4回で、中手には三目、四目、集四、五目、花五などがあることを説明しました。そういう形でなくても、複数の石を取らせても相手に2眼を作られない場合があります。それを大中手と称します。
2図の黒1の所を白に打たれるとセキですから、手になるとすれば黒1よりありません。白は攻め合いでは負けなので白2白4と取るよりなく、黒5とアテてみれば白に眼を作る余地がありません。黒1と打った形は棒四とでも称すべき形で通常は中手にならない形です。その4子を捨てて眼を奪うのが大中手と称されるゆえんです。 次に少し大きい6子の大中手を見ていただきましょう。
この白が無条件で取れるとすれば黒1しかありません。白2白4で6子を取られた跡に黒5のツケがあって白死となります。 こういう「殺せるなら××しかない」という考え方は、詰碁に答えがあると分かっているからできることかもしれません。実戦で石を取らせて待ったでは反則になります。大中手は石の下の一種ですが、こうした捨て石の筋に速く気付くためには、頭の中で石が取られた形を想像できなければなりません。頭の中に碁盤があって、石がひとりでに並んでいって、囲まれたら自然に消える、ようになれば理想的です。本当のことを書けば、プロ級の人達は詰碁を解くのに「問題図とにらめっこ」のようなことはしないのです。まず問題図を見て石の配置を頭の中の碁盤に写しとり、後は頭の中の碁盤だけを見て考えるのです。私もそれに近いことはできて、散歩しながら詰碁を解くこともあります。ときどき問題図の配置が分からなくなってパニックに陥ることもありますけれども。 次は、なんと16子をまとめて捨てる、史上最大と思われる大中手です。吐血の局で知られる赤星因徹の玄覧の垂棘屈産失国之形は、この大中手に始まって、全部で84子を捨てる詰碁の大作です。
さすがにこの図は観賞用で、アマチュアが空で覚える必要など全くないのですが、詰碁ではこんなこともあるとご記憶ください。 |