(ダメヅマリを利用する筋) 「敵の急所は我が急所」は詰碁を解く際に極めて有効な格言で、これまで説明してきた手筋は「敵の急所は我が急所」で発見できることが多いと言えるくらいです。しかし、発見するには違う発想が必要になる手筋もあります。今回はそうしたものの代表例である「ダメヅマリを利用する筋」です。
1図はダメヅマリを利用する筋の基本問題です。2図黒1~白4の準備工作をして黒5に捨てれば白は処置なしです。この図は簡単なので、黒1で2の所は白1の所で凌がれるから敵の急所は・・・といった考え方でもよいのですけれども、一般のダメヅマリを利用する筋の詰碁では、先手が間違えた場合に白が受ける箇所が、初形の先手の急所ではないことが多いのです。むしろ「普通に打ってダメそうだが、何かしらダメヅマリっぽいな?」といった感覚に頼って解くことが多くなります。そこで、第1回に述べた「やさしい詰碁をたくさん覚える」ことで「ひらめき」というパターン認識の力を養うことが肝要になるのです。
3図は玄玄碁經の「老僧入定」の形を少し変えたものです。失敗の4図の黒1黒3は当然の手段ですが、白4の受けに「あれっ?」となりそうです。黒5だと白6で5子を捨てて隅で生きられるからです。ここで黒1に疑いを持ったりしたら、もう泥沼ですね。実は、白4に対して、5図の黒5という絶妙手が用意されていて皆殺しにできるのです。 「老僧入定」が解けたときの感動は今でも忘れることができません。前田先生の著で詰碁を知り、玄玄碁經で詰碁のトリコになったという感じです。 閑話休題。正解の黒5の意味は難しいものではありません。白に取らせて一線に這えば、白はどちらからも押せなくなるわけです。しかし失敗図のどこを見ても黒5のヒントをつかむのは難しそうです。 ここで、詰碁の解き方を整理しておきましょう。 (1) 殺すなら狭める、凌ぐなら広げる手から読む。 (2) 相手に巧い受けがあったら、「敵の急所は我が急所」と考える。 (3) (1)(2)でダメそうなら、ダメヅマリの利用などを考える。 というのが基本です。プロが「睨み詰め」で解いてしまう場合でも、この基本は変わらないはずと確信しています。ただし、解けたと思っても後手の受け方を見落としてはいけません。後手の受け方を変化と称しますが、変化は全てを確かめなければなりません。それを速くするのは訓練です。 ダメヅマリを利用する筋は、一つの手筋というより、手筋の組み合わせで効果をあげるものが多いと言えるでしょう。 最後に鮮やかにダメヅマリを利用する詰碁を一つあげておきます。
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