(詰碁の創り方) 第11回
塚本惠一 著 [詰碁世界第16号(2003年1月発行)掲載]


第9回で簡単な模写法を紹介しました。今回は難しいが詰碁の力をつけるにはうってつけの本格的な模写法について書いてみます。
一つは参考にする古典に新たな筋を追加する方法で、もう一つは同じ筋を異なる配置で表現する方法です。
新たな筋の追加の例として前田陳爾先生の作品を示します。

1図 黒先白死
2図 1図の解
2図黒3が仕上げの両ウッテガエシを見た目欠きの筋です。この筋を追加したことと初手の紛れで、従来の両ウッテガエシ問題とは一味違った作になっていると言えるでしょう。巧みな逆算にも見えますが、恐らく前田陳爾先生は構想が浮かんだ次の瞬間に図面を完成させたのだろうと想像します。
実は本作には「悪しき」類似作があります。

3図 改悪図

右下隅の黒2子を白からウッテガエシで取れる形にしています。改作者は意外性を高めたつもりなのでしょうが、初手で飛び込む紛れが消えて、初手が絶対手になり、作品の質を落としています。
それ以前に、この程度の+α では盗作のそしりも免れないでしょう。
次に、同じ筋を異なる配置で表現する模写法について。私は、詰碁作りを始めた頃に、百題ほどの詰碁集の全ての手筋を、異なる配置で表現してみたことがあります。詰碁の筋は、解いて覚えたというより、作図して理解したという感じです。
そうした模写作の一つが「算月」に収めた「沈黙」という作品です。

4図 『沈黙』 黒先白死
5図 4図の解
5図黒1の攻めに白2白4と抵抗しますが、黒5と切って、黒7に黙ってアテるのが手筋で、白を両押す手無しに導きます。
本作は、一合升に見られる「2目を捨てて放り込まない」手筋を模写したものです。それがなかなか作れず、苦労した思い出があります。

6図 黒先生き
7図 6図の解
こうした模写は、試行錯誤を繰り返して身に付けて戴くよりなさそうです。それが、あなたの詰碁の理解なのですから。
なお模写作を発表するには、類似作とか盗作とか非難される可能性に注意する必要があります。少なくとも玄玄碁經と碁経衆妙との衝突は避けるようにして戴きたいものです。変化も含めて。



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