(詰碁の創り方) 第12回
塚本惠一 著 [詰碁世界第17号(2003年4月発行)掲載]


第10回で逆算を説明しましたが、初形の候補から読んでいく方法は正算と言います。その正算の中でも手数を延ばしながら手筋を追加していく方法を順算と言います。今回は順算で作った拙作の作図過程を紹介します。
星の定石に現れる手筋が素材で、第2回で紹介したアレンジ法の例です。また、手数を延ばしながら手筋を追加していくところは、第3回で紹介した構想法の例にもあたります。

1図 星の定石形
2図 白の狙い
3図 黒の凌ぎ
1図は星に小桂馬ガカリから派生する定石形で、左辺のツメがあれば2図のハイからオキの狙いがあるのは常識ですね。部分的には3図の黒1黒3が凌ぎ筋になっていて、綺麗なオイオトシになります。
これを見るうちに「オイオトシにされても眼にならなければ面白そう」という構想が浮かんできました。そうです、石の下の筋が浮かんだのです。

4図 想像図白先
5図 構想手順
6図 つづき
白4子を取らせても白3の跡切りが打てればコウになりそうです。5図の黒2の下の白石が取られない形にできればよいのです。

7図 初案
8図 作意手順
9図 つづき
そこで思いついたのが8図の白10のコスミです。盤端の手で、いかにも詰碁らしい手筋です。この案でも一応は詰碁と言えます。
しかし、黒先なのに巧い手は白側ということと、常用の筋とはいえ、黒1サガリの手筋で始まるのにコウに粘られるというのは、作品として今一つの気がしました。この白10コスミは残して、それでも無条件で生きるようにしたい、そういう虫のいいことを狙ってみたのです。
白12に黒11の上につぐ、白は隅の眼を取る、そこでもう1眼を作るには? そう考えて次の完成図を得ました。

10図 完成図
11図 作意手順
12図 作意手順
白12が妙手だけに黒15黒17の俗な凌ぎが見えにくくなっています。狭いところで19手に及ぶ長手数の応酬は好作と言えると思います。




11図の修正図

本稿掲載後に白に巧い受けが見つかりました。11図の白4では次図の白4ハサミツケが正しくコウになるのが正解です。

黒7でつなぐのは白aで黒死。



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