(詰碁の創り方) 第13回
塚本惠一 著 [詰碁世界第18号(2003年7月発行)掲載]


詰碁は芸術か?という議論がありますが、少なくとも作者は解答者へ何かの狙いを伝えようとして作図するわけです。それが巧く伝われば感動を与えることもできるというものでしょう。
徒然草の言を借りれば、私の作図は「見ぬ世の人」へのメッセージです。
そう考えれば、詰碁の配石は書画にも比すべき表現と言えるので、美しくかつ効果的な配置を追求したくなります。それが推敲です。

1図 原案 黒先
2図 1図の作意

 白6トリ、黒11トリ
左右同型の詰碁は「中央に手あり」の金言があるので筋が見やすくなりがちです。そこで、初手は中央でも、途中から「中央でないが左右を見合う」方針で作図したものがあります。1図は2目を捨てるオイオトシの筋を左右同型で表現してみたものです。
既成の筋とはいえ、これくらい簡潔に表現できれば、立派な新作、と思い、すぐに披露したのが大失敗でした。
白8で9の所という「顎の外れたコスミがあるよ」と指摘されてギャー。不詰(つまず)でした。こういう喜びすぎの軽率をよくやってしまいます。
本作には急いで修正しなければならない事情があったので、黒2子を追加して3図としました。

3図 原案 黒先
4図 3図の8手目以降
これで白8は一線に渡るしかなくなって、一応は詰碁の出来上がりです。
しかし、追加したトビツケの2子は、いかにも余詰消しの配置です。他の役に立たないところが効率が悪く、機能的に美しくありません。
最終手の黒13でオイオトシなのに、その肩を守っている★というのですから、いかにも無駄石のように見えるところも嫌味です。
で、長い間気にしていたのですが、あるとき、4図の8の2路上のキリを防ぐならカタツギがすなお、という単純なことが頭に浮かびました。

5図 
6図 7手目の紛れ
そこで5図を並べてみると、2図→4図の作意手順は成立していますし、7手目の紛れの黒7に対する白8の味が良くなっています。この5図を修正図とすることにしました。

一通りの作図法に触れたことになると思いますので本講座は今回で一段落とさせていただきます。ご愛読ありがとうございました。



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