(詰碁に強くなる法第18回)「黙りの筋、敵の弱点を利用する筋」
塚本惠一 著 [詰碁世界第19号(2003年10月発行)掲載]


(黙りの筋)
ダンマリとは聞いたことがない、と言われそうですね。間接に攻める筋、とか、先に弱点を守る筋、とか言う方が普通でしょう。しかし、詰碁では「黙って○○」という表現がよく使われるので、こう呼びたくなります。

1図 黒先
2図 黒先
3図 黒先

4図 1図の解
5図 2図の解
6図 3図の解
4図5図の黒1が「黙ってアテコミ」という感じです。置いたり切ったりしないで単に、というくらいの意味です。6図の白2は狭めるハネの筋ですが、黒1に挨拶しないので、これも「黙って」と呼ばれることがあります。

7図 黒先
8図 黒先

9図 7図の解
10図 8図の解
9図の黒3や10図の黒1が間接に攻める筋とか先に弱点を守る筋と呼ばれます。もちろん、この2つは狭める筋の一種です。それをあえて「黙り」と言うのには理由があります。
詰碁に限らず、囲碁で相手に対して効きがある場合は保留して相手の出方を見て最適なタイミングで決めるのが普通です。決めずに味を残すと言う手法です。逆に、相手から効きがある場合は、その効きを封じるのが有効になることが多いものです。9図黒3や10図黒1は、相手のアテの効きを消し、自分からの複数のアテの効きを生じさせていることになります。それで一見ダメのような「間接の攻め」が最善の手段になっているのです。


(敵の弱点を利用する筋)
この「効きを残す」という考え方は手筋を組み合わせるときの基本になります。敵の弱点を利用する筋は、そういう考え方で複数の手筋を組み合わせたものの総称です。

11図 黒先
12図 11図の解
13図 変化
12図の黒1が敵の弱点を利用する筋です。白がどちらからアテても12図なら黒7トリ、13図なら黒5サガリの効きが生じて凌げます。

以上で詰碁の基本的な筋を一通り紹介できたと思います。と書くと、よく聞く「2の一の筋」はどうした?という声が聞かれそうです。それは次回に説明し、「詰碁に強くなる法」の纏めをしたいと存じます。



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