<さまざまな戦法> バックギャモンはダイスによって進展するものであるから必ずしも自分の望むような展開になるとは 限らない。そのため必然的に起こりうる戦法として下記のものがある。 1、ランニングゲーム 2、ブロッキングゲーム 3、プライミングゲーム 4、アタッキングゲーム 5、バックゲーム |
1、ランニングゲーム> お互いに全てのコマがすれ違って、もうヒットされる可能性が無くなった状態をノーコンタクトという。ランニングゲームとは全体として相手よりコマが進んでいるプレイヤーが、このノーコンタクトを目指す戦略である。バックギャモンは全てのコマを先に上げたほうが勝ちであるから、ランニングゲームはバックギャモンの基本である。 図のような局面で白が4-5を出したとすれば、白は黒よりもかなり進んでいることから、黒のコマをヒットすることを期待したりせず安全にすれ違うことが重要となる。当然ながらM→Q、M→Rと、ミッドポイントのコマを逃がすべきである。 ノーコンタクトにするのは、もちろん白のコマが進んでいることが条件である。自分のコマが遅れている場合は、素直にすれ違ったりせず居座ってヒットするチャンスをねらうことになる。 ランニングゲームを狙うには以下の2つの条件が必要である。 1.全体のコマが相手より進んでいること。 2.バックマンがすでに逃げているか、安全に逃げられる予定であること。 この2つの条件を満たしている場合は相手のコマをヒットする必要は無い(*注)。ひたすら早くすべてのコマをインナーに集め、上がりに持っていくことである。 (*注)相手のコマをヒットするとそのコマは自分のインナーに生き返って進路を妨害する新たな敵となる。 1.の条件が本当に満足しているかどうかは、すべてのコマのピップカウントを計算することにより判断する。この作業を怠ると、自分のほうが遅れているにもかかわらずランニングゲームを目指すようなミスを犯すことになる。 例えば上の図のピップカウントを計算すると、 白は 2×2+3×5+3×6+3×8+2×9+2×13=105 黒は 1×4+2×5+4×6+2×7+2×8+2×13+2×18=130 ここで白の手番でもあるから、白はランニングゲームを狙うチャンスであり、キューブが動いていないならば次にダブルをかけるかどうかを検討することになる。 ダブルをかけるかどうかは、ピップカウントの差により決定するが、自分のほうが10%以上進んでいれば、ダブルをかけるべきである。またダブルをかけられたほうは、15%以内の差なら受けてもよい。ただし、この経験則は、お互いにコマの半数以上があがった状況では有効ではなくなる。ゲーム後半ではピップカウントの総計よりも、残っているコマの数のほうが重要になるからで注意が必要である。 上の例では25ピップ(約24%)離しているから白はダブルをかけるべきであり、黒は受けるべきでない。 2、ブロッキングゲーム 常にダイスの目が良く、ランニングゲームにして安全に勝てるゲームばかりとは限らない。自分のコマが相手より遅れることも当然ある。その場合の戦略がこのブロッキングゲームである。おそらくバックギャモンの中では一番多いゲーム展開であろう。 ブロッキングゲームとは相手のコマの前方に1ヶ所または2ヶ所、ブロックポイントを確保し、相手にブロットが生じた場合にヒットをねらう作戦である。この場合残りのコマで自分のインナーをブロックして、相手をヒットした場合、簡単に生き返らせないようにする。もしも生き返ったとしても味方から切り離されてしまうので戻ってくることは至難である。 図はゴールデンポイント(F)をブロックしエースポイント(B)にコマを残したブロックゲームとしては理想的な局面である。白としてはピップカウントでおおはばに負けているので、こうして相手にブロットの生じるのを待つ。図の場合黒の番だとすると、ダイスの目が6-2でブロットが発生する。 この図もブロッキングゲームの一種でエースポイントゲームと呼ばれる。これは作戦として選んだというものではなくやむを得ずこうなってしまったということが多い。このような展開であっても逆転する可能性は常にある。たとえばここで黒が5ゾロを出してブロットを残し、それをヒットすれば逆転である。もちろんダブルをかけられたら降りるべきであるのは言うまでもない。 さて左図のような局面で、白は1-4を出した。ヒットする気になればFポイントのコマでKポイントの黒をヒットできるが、そうすべきであろうか? 正解は、ヒットすべきではない。右図のようにM→Q、T→Uと動かすところである。 バックギャモンというゲームは再三言うようにレースゲームであり最終的には早く上がったほうが勝ちになるが、その途中ではコマの進み具合よりもコマの配置のほうが重要になることが多い。左図の場合であればまだ自分のインナーが未完成の状態であるから、せっかく築いたFのゴールデンポイントを崩してはならない。 Qポイントにスロットした白のコマはヒットされる可能性が高いが、まだ黒のインナーもがら空きであるので、心配する必要はない。重要なのは相手との間合いである。自分のインナーボードが埋まってきたころを見計らって、ヒットを狙うのが良い。左図のような状態ではお互いにヒットをしたりされたりするのはさほど重要な ことではないのである。 とにかく相手のインナーに築いた自分のゴールデン・ポイントを崩すのは、それが相手に対して致命的な一撃になる場合だけ、と覚えておく必要がある。 3、プライミングゲーム ブロックが6つ並んだ形をプライムという。プライムができれば相手のコマはそれを飛び越えることはできない。 図のような局面になれば、白の勝利はほぼ確実である。S,T,Vにある遊びコマを使って、Xの黒をヒットし、プライムを先へ延ばせばよい。もちろんリターンヒットされるかもしれないが、この局面ではXにある黒の脱出は不可能であるからあわてることはない。黒のインナーがクローズアウトされていたとしても、黒はいずれブロックポイントを崩さないといけなくなる。白はそれを待つだけである。 しかし、図のような場合は注意しなくてはならない。 白はプライムを完成しているが、黒もかなりのブロックポイントを作っている(このようにブロックが4個または5個並んだものをセミプライムという)。ここで白がXの黒をヒットし黒がリターンヒットしたとして、バーにある白が復帰した場合、4-6の目が出ないと逃げ出すことができない。 4ではなく1または2で復帰したとすれば、さらに脱出は困難となる。白はバーから復帰したあと自分のプライムを崩さねばならないかもしれない。プライムが崩れては勝負は逆転である。相手にセミプライムができている場合は注意が必要である。 プライムができれば思い切ったムーブができる。 図のような配置で白は2-4を出した。Sを崩してベアリングイン完了できる。しかし、この場合は正解ではない。大差のように見えるが黒のコマはかなり進んでいるので、黒のバックマンに脱出されると一気に逆転してしまう。 この場合は黒のバックマンをヒットし、さらにクローズアウトをねらうか、あるいはそのヒットした白のコマをリターンヒットしてもらい、Eにある黒のブロットをリターンヒットすることをねらう。相手のコマを2個ヒットすればまず逆転の心配は無くなる。 もちろん、ギャモン勝ちをねらう展開ではなくダブリングキューブが使えるならば、図はキューブを使うべき局面である。 4、アタッキングゲーム アタッキングゲーム、別名ブリッツ(電撃作戦)というこの戦法は、ヒット、ヒットの連続で相手のバックマン二個をバーの上で踊らせ、勝つときは大抵ギャモン勝ちとなるという、胸のすく戦法である。ただし、やり始めたら相手がノックアウウトするまでとことんやらねばならない。一度失敗すると取り返しがつかないこともよくあり、それだけに細心の注意が必要である。 それではどのような場合にアタッキングゲームをねらえばいのだろうか? 図のような局面で白に3ゾロが出たとすれば、R→U(二個)、T→W(二個)と進め、これはアタッキングねらいとしては理想的な形となる。 前の局面が進んで黒が一個だけ復帰したところ。ここでは何をさておいてもVポイントの黒のコマをヒットしなくてはいけない。ここでたとえば白に5-4が出たとすると、M→Q、M→Rなどと動かしている場合ではない。M→Vとヒットすべきである。白にブロットが残るが覚悟のうえである。またもしリターンヒットされたとしても、この場合はCにある黒のブロットをヒットするチャンスもある。弱気になってヒットをせず、次に黒に4を出されてVにブロックを作られては面倒になる。 前例で、時にはブロットを残す危険も必要であると書いたが、それも場合によりけりである。この図で白に4-3が出た場合、M→P、R→Vとビルダーを作りつつヒットすると、リターンヒットされれば黒のセミプライムに捕まる。このような場合はR→V→Yとヒットしつつ逃げるべきである。ヒット・エンド・ラン(ひき逃げ)といわれる手筋である。 アタッキングゲームをねらうためには以下の条件を満たしている必要がある。 1.自分のインナーが相手よりたくさんブロックされていて、ヒットすることが有効であること。 2.相手がバックマンをスプリットしているか、またはボード全体に相手のブロットが幾つかあってヒットをねらえること。 3.相手のインナーの5ポイント(ゴールデンポイント)または4ポイントをブロックしていることが望ましい。たとえアタックが失敗したとしても立てなおしがきくし、ギャモン負けの可能性が低い。しかし、これらのポイントを確保していなかったとしてもアタッキングゲームにさしつかえはない。 上記の条件に加えて、クローズアウトするためのビルダーが多くあればあるほど成功する率は高くなる。 すべての条件がそろうことなどまずあり得ないから、あるていどの条件がそろったら果敢にアタックするのもいい。この戦法で勝ったときの気分は最高である。 5、バックゲーム 近年になって編み出されたというバックゲームは絶望的な状況から逆転に持ち込むという魅力的な戦法であるが、勝っても普通の勝ち、負けた場合はギャモン負けになるという極めてリスクの大きい戦法である。 しかしそんな不利な戦法であっても、そのまま黙ってそのゲームを負けてしまうよりはずっとましである。であるから、バックゲームはやむを得ずおこなうものであり、進んで目指す戦法ではない。 図の白はピップカウントではおおはばに負けているから勝つためにはバックゲームをねらうしかない。CとDのポイントに作られた白のブロックがバックゲームの中心となる。この二つのブロックポイントを最後まで確保しながらゲームを進め、黒がベアリングオフ途中でブロットを発生させればそれをヒットするのがねらいである。 前図から進んだ局面で、すでに黒は5個のコマを上がっているが、かなり危険な状態である。 黒が次に6-6、6-4、6-3、5-5、5-4、5-3、4-4、4-2、3-2のどれかの目を出せばブロットを発生する(確率15/36)。白はそのブロットを二ヶ所から、つまり20/36以上の確率でヒットできることになる。 もしもヒットできたなら、黒のインナーは崩れてしまっているから白はそうとうに有利なゲーム展開ができることになる。またもし、白が一回目のヒットに失敗したとしても、黒が再びブロットを作る可能性も高い。 ★バックゲームをするうえでの注意点 1)進みすぎないこと。 バックギャモンは相手との間合いが重要である。図のようにバックゲーム側が進みすぎていると、黒をヒットしたとしても(チャンスは多い)、すでに白のインナーが崩れてしまっているので、ヒットした黒のコマを捕獲するのはまず不可能である。 したがってバックゲームをねらう場合、進みすぎを防ぐためにわざとブロットを作って相手にヒットさせるようにしむけ、相手はヒットしないように努力するという、およそ通常とは逆の現象となることが多い。 2)相手のインナーに確保するブロックポイント。 もっとも良いとされるのはC,Dのポイント、次にB,Dである。なるべくローポイントにコマを集めるようにする。B,Cをブロックするのも有効だが、ときによっては余分のコマを脱出させることが困難となることがある。 バックゲームは独特のスリルがあり、逆転して勝った時の快感が大きいため、この戦法の信奉者は多い。しかし、再三言うように初めから望んでおこなうものではない。ダブルを受けたあとで大きく不利になった場合などにねらうべき戦法である。 |
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