<ダブルのテクニック> ダブルというルールは1920年代のアメリカで生み出され、バックギャモンのゲームとしての面白さが革命的に向上した。それまでのバックギャモンは常に同じポイントの獲得ゲームであり、勝負の行方が見えたゲームでも、ただゲームを終了させるためだけに双方がダイスを降り続ける必要があった。ダブルが発明されなければバックギャモンはこれほど世界中に普及しなかったと思われる。 ダブルはバックギャモンにおいて重要な地位を占めており、コマの動かし方に差が無くとも、ダブルのタイミングの上手い下手で獲得するポイントには大きな差が出てくる。 以下にダブルの使い方と考え方を述べる。 ダブルの使い方 1、勝負が決まったゲームを早く終わらせる 2、逆転される可能性のあるゲームを勝ち取る 3、ポイントを増やしたい時にダブルを受けさせる 4、マッチプレーとクロフォードルール ダブルの考え方 1、確率にもとづくダブル(ダブルの25%理論) 2、ダブルして良い時と悪い時 |
ダブルの使い方 1、勝負が決まったゲームを早く終わらせる 図は白の手番である。ノーコンタクトとなって後はダイスを振るだけの局面となった。 白がここからギャモンで勝つには大きいゾロ目が4回以上連続する必要がある。また黒もこの局面から逆転するには同様に大きいゾロ目が何回も続くことを前提にしなければならない。したがって白がここでダブルすれば黒は降り、ゲーム進行が早まる。 ダブルは勝敗の決した無意味なゲームを早く終わらせ、時間の節約にもなる。 2、逆転される可能性のあるゲームを勝ち取る 図で白の手番なら次に上がりきる確率は2-1以外の目ならなんでもよいので34/36ある。しかし100%ではないから、ここではダブルをかけなければいけない。黒も2/36の確率しか逆転できないので降りるところである。 わずかながらあった逆転の可能性をダブルによってゼロにした例である。 3、ポイントを増やしたい時にダブルを受けさせる 右図の局面で両者のピップカウントは、黒80、白75であるからほとんど差がない。ここで白がダブルをすれば、あまり経験のないプレイヤーなら受ける可能性が高い。 しかし、両者の体勢から考えれば黒は受けるところではない。黒は6ゾロ以外に安全に2個とも脱出することはできないので、6が出れば白のインナーのブロックを崩さねばならず、崩したあとのブロットを白のビルダーからねらわれるからである。 この後、左図のようになった。ピップカウントの差は変わらないが、この局面では白に不都合な目は6-5だけである(その場合、黒が2ポイントをリターンヒットできる確率は11/36)。白に5-4,5-3,5-2,4-3,4-2,3-2,5ゾロ,2ゾロが出ればクローズアウトできる(14/36)。それ以外にも5-1,4-1,3-1,2-1,1ゾロでひき逃げできる(9/36)。また4ゾロ,3ゾロでもポイントオンされる。白に有利な目を合計すれば確率25/36もあり、もしそうした目が出なかったとしても、白にブロットができることはほとんど期待できない。そのうえ黒に5以上の目が出なければインナーから脱出できないのであるから、この局面は白に圧倒的に有利な状況である。白がダブルしたとすればほとんどの人が降りるのではないだろうか。 得点を倍にできるダブルは相手が絶対に不利だという時点でかけても降りられるだけである。逆転の可能性が高いと思わせるような局面でかけてこそ効果を発揮する。 4、マッチプレーとクロフォードルール この他のダブルの使い方としては、マッチプレーのゲームで負けているほうが得点差を縮めるためにおこなうものがある。 例えば7ポイントマッチで、すでに相手に6ポイントを取られている場合、ゲームを1つでも落とせば即座に負けになるわけであるから、負けているほうはゲーム初めからダブルすることになる。ただし、どちらかが6ポイントに達した次の1ゲームだけは双方ともにダブルをかけられないというクロフォードルールが一般的である。 クロフォードルールはリードしているほうを1回だけは保護しようというルールである。たとえば5対5のポイントから1ゲームを勝って一方が6対5とリードした場合、クロフォードルールが無ければ負けているほうは初めからダブルすることになり、前回のゲームで勝った側の優位性が無になる。クロフォードルールはその優位性を1回だけ保護するものである。 |
ダブルの考え方 1、確率にもとづくダブル(ダブルの25%理論) 図の白は次に23/36(約64%)の確率で上がりきる。勝率が50%以上あるから、ここではダブルをかけるべきである。しかし、黒も勝率が25%以上あるから、ここはダブルを受けるべきである。 なぜ黒が不利な局面でありながらダブルを受けるのかはダブルの25%理論として説明される。 白が75%の勝率になったゲームが100あるとする。白は当然ダブルをかけ、黒がすべて降りたとすれば、黒の負けは100ポイントである。もしも黒が25%の勝率ではあるがすべて受けたとすれば、100のうち25ゲームに逆転勝ちできるわけで、黒の損失ポイントは75x2=150、取得ポイントは25x2=50で、差し引き損失が100と、すべて降りた時とまったく同じになる。 したがって勝率25%以上であれば受けたほうが全部降りるよりも失うポイントは少なくてすむことになる。これが25%を境界としたダブルの駆け引きである。 まとめると、 ダブルをかけるほうは勝率が50%以上ならかけるべきで、相手は勝率が25%以上あれば受けるべきである。 ただし、この25%理論はトーナメントなどマッチプレーのゲームでは適用できない。トーナメントでは負けると終わりという場面が少なからずあるわけで、点差によっては勝率が25%より高くとも降りるべき時があり、25%より不利でも受けるべき時がある。 2、ダブルして良い時と悪い時 勝率が高くともダブルをかけるのは慎重にするべき場面がある。 ★ギャモン負けの可能性がある時 図の白は確率22/36(61%)で黒のブロットをヒットできる。ヒットすれば白の勝利は間違いない。 しかし、ここでは白はダブルするべきではない。なぜなら、もしもヒットできなければ、白はギャモン負けになる可能性が高いからである。たとえ勝つ確率が高いといっても、負けた時に2倍のポイントを失う場面ではダブルをかけるべきではない。 ★トーナメントでのゲーム トーナメントはあらかじめ決められたポイントを先に獲得したほうが勝つというルールでおこなわれる。ダブルに制限のないトーナメントにおいて、お互いにダブルをかけあえば1回のゲームで勝負が決まってしまうこともあり得る。したがってダブルを多用すると実力を反映しない結果になることも多い。 また点差によっては勝率がよほど良くなければダブルをかけてはならない。たとえば13ポイントマッチで11対9のポイント差の時、勝っているほうがダブルをかけ、負けているほうが受けたとすると、負けているほうは即座にキューブを返してくる(リダブル)。こうなるとこのゲームに勝つことがトーナメントを勝つことになるわけで、そのためにも勝っているほうのダブルは慎重にする必要がある。 |
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